Columnコラム
技術者によるテクニカルコラム:
時計の構造と外装について
現代の生活に欠かせない「時計」。その精密な構造と美しい外装に魅了される人は多いですが、技術的な裏側について詳しく知る機会は少ないかもしれません。このコラムでは、時計の構造や外装などについて、技術者の視点から詳しく解説します。時計の歯車はどのようになっているのか、動画でその動きを見ることで時計に対する理解が深まります。また、普段あまりご紹介する機会のない、傷ついてしまったケースの再加工メンテナンスについてもご案内いたします。技術者が語る専門知識を通じて、時計の世界をより深く探求してみてください。

#01タイプ別 時計の回転ベゼル
ここでは時計の回転ベゼルについてご説明いたします。モデルごとに逆回転防止や両方向回転などの違いがあるものや、中にはケースに付いている専用リューズで操作するものもある回転ベゼルですが、目盛りのデザインや機能も様々あります。その中でも多く採用されているのは、カウントアップベゼルとカウントダウンベゼルではないでしょうか。
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カウントアップ式ベゼル -
カウントダウン式ベゼル
カウントアップベゼルの一般的な使い方としては、ベゼルの12時位置にあるマーカーを分針の指している位置まで回転させ、現時点からの経過時間を見るための機能です。カウントダウンベゼルの場合は、ターゲットとなる時刻までベゼルのマーカーを回転させて残り時間を見るための機能となります。時計技術者の立場から申し上げると、個人的にはカウントダウンベゼルは『残り何分?』と急かされている感じがしてあまり好きではないです。
ステンレス製の両方向回転ベゼルが組み込まれた時計105.ST.SAには、ベゼル自体にテギメント加工とPVD加工、さらに特殊結合方式といった2つのジン・テクノロジーが採用されています。デイデイトモデルではベゼルに2段の目盛りが刻まれていて、下段の数字は分針に合わせて現時点からのカウントアップ(分の積算)を読み取ることができます。
上段は第二時間帯を見るときに時差の分だけベゼルを回転させることで簡単に現地時間の確認ができます。また、この時計の別の使い方として時針に合わせると時間単位のカウントアップベゼルとして使用することができるので、飛行機や電車などでの長距離移動の際に時間単位の計測もできます。

上の例
上段を使用した場合:現在地の時間は10時8分で、第二地域の時間は4時8分。別な使い方では、6時にスタート後、現在は4時間経過している。
(下段を使用した場合では、9時30分にスタートし、現在は38分経過している)
一般的なUTCモデルでは、24時間表示を指し示す矢印型の針をリューズ操作によって動かすことで任意の第二時間帯を設定しますが、105.ST.SA.UTCなどに搭載されている回転ベゼルは正確に24分割で動作するノッチが組み込まれていますので、ベゼルを時差分 動かすだけで瞬時に第二時間帯を設定できる優れものなのです。時計のベゼルも使いこなすと便利な機能が組み込まれていますので是非試してみてください。
#02時計ケースのサンドマット再加工
サンドマット(梨地仕上げ)の時計ケースやブレスレットの再加工についてのご案内をいたします。サンドマットの時計ケースは一見ザラッとしていて地味に見えますが、オールドモデルはこのサンドマット仕上げが多くの時計に見受けられ、現在でも人気の高いEZMシリーズにも多く採用されています。いかにも「Sinn(ジン)」という雰囲気を醸し出すのに一役かっているケースの仕上げの一つだと言えるでしょう。このサンドマット仕上げの時計ケースですが、傷が付いたときの光り方、あるいは風合いの変化といったものが、ポリッシュやヘアライン仕上げのケースに比べると目立つように感じます。
時計技術者の個人的意見ですが、今までザラッとしていた面に、前触れもなく突然出現したテカテカ光るすり傷などには、強烈な違和感を覚えてしまいます。そんな傷を目立たなくするのにはサンドマットの再加工がおすすめです。時計ケースについた打痕や深い傷は残りますが、テカテカ光るすり傷などもまとめて再加工するため全体の風合いも揃い、打痕や深い傷も目立ちにくくなります。再加工費用はケース・ブレスレットそれぞれ税込11,000円となりますが、オーバーホールの際にお申し付けいただければ、それぞれ税込5,500円で承ります(※)。
ラグの上面やベゼルのエッジ部分に経年による着用傷やこすれて光ったような傷が目立つ。
ラグ、ベゼルについた打痕などの着用傷は残るが、全体の調子は揃うため傷が目立ちにくい。
【注意事項】
ご購入の製品とは仕上がりの風合いが異なります。また、サンドマットの再加工はステンレススチール、チタン、Uボート・スチールの時計に行えますが、テギメント加工が施されている時計や箇所には対応できません。尚、作業の性質上、指定箇所のみのピンポイント作業(ex. 時計ケースサイド9時側の傷処理のみ等)は対応できませんのであらかじめご承知おきください。
さらに、Arドライテクノロジー搭載の時計は、ケースの再加工時にはプロテクトガスが抜けてしまいますので、プロテクトガスの充填に別途 税込5,500円がかかります。時計のオーバーホールの際に同時に再加工をご依頼いただければ、プロテクトガスの充填はオーバーホール料金内で自動的に行われます。
※価格は2025年9月現在のものです。
#03カレンダー修正の
禁止時間帯について
お預かりした修理ご依頼品を拝見すると、カレンダー修正の際、禁止時間帯に操作したと思われる不具合がしばしば見受けられます。ここでは時計のカレンダー修正のメカニズムについてご紹介いたします。

ご存じの通り、機械式時計は歯車を介して動力を伝え、針で時刻を表示します。カレンダーのメカニズムも同様に時刻を表示する歯車の力を使い動作しますが、この歯車は夜の12時近辺で自動的に日付を切り替えるために、比較的長い時間帯で関連する歯車同士がかみ合った状態になっています。この時間帯にカレンダーを手動で修正するとかみ合った歯車を無理やり人の手の力で動かすことになり、日送り車やカレンダーディスクの刃先などパーツの損傷につながり、カレンダーが変わらなくなったり、切り替わる時刻がずれてしまう不具合が発生します。モデルによって若干のばらつきはありますが、Sinn(ジン)では午後9時から午前3時の間の修正は控えていただくようご案内しています。
日常で時計が止まった状態から時計をお使いになる際は、ゼンマイをゆっくりと巻き上げてリューズで針を回し、午前午後を確認したうえで時刻を合わせてカレンダーを修正していただくのが手順となりますが、その際に禁止時間帯でのカレンダー修正は行わないようご注意ください。
■拡大動画
【正しい動き】
時計の針が20:00を超えたあたりから日送り車の送り爪はカレンダーにある14日の刃先に向かって近づいていきます。22:30付近からカレンダーの刃先と接触しカレンダーを時計回りに動かし始めます。
0:00付近でカレンダーの日付が切り替わり日送り車の送り爪はカレンダーの刃先から遠ざかっていきます。
■拡大動画
【禁止時間帯での操作】
禁止時間帯でカレンダーの早修正を行おうとすると日送り車の送り爪がカレンダーにある15日の刃先に干渉するため、このまま操作すると日送り車やカレンダーの刃先が損傷する不具合が発生します。
※画像は22:00付近での位置関係
間違えずスムーズに日付を合わせたい場合には午前・午後を問わず6時の位置にとりあえず針を持って行ってから、カレンダー修正を行うことをお勧めします。針が6時のポジションであれば歯車とかみ合うことはありませんのでカレンダーのパーツを壊してしまう恐れはありません。ご参考になれば幸いです。
以上の内容は、次の時計の購入やご使用中の時計のメンテナンスの際に
きっと参考になることと思います。
迷ったときには、Sinn(ジン)に関するプロフェッショナルがいる
国内正規販売店にご相談ください。
時計ライフをより充実したものにするヒントが見つかることでしょう。

