Columnコラム

限定クロノグラフとして蘇った
稀代の時計103.St.Ty.Hd

限定クロノグラフ「103.St.Ty.Hd」は、Sinn(ジン)の代名詞でもあり1960年代から続くパイロットクロノグラフ「103」シリーズの歴史を蘇らせる、Sinn(ジン)のコレクション中の傑作腕時計です。ヴィンテージ ジン コレクターを魅了するこのクロノグラフは、過去のデザインを継承するだけでなく、現代的な仕様を兼ね備えたプロフェッショナル仕様の時計です。時計愛好家にとって、時代を超えた魅力を持つ時計を手に入れることは大きな喜びですが、この手巻き式パイロットクロノグラフ「103.St.Ty.Hd」がどのようにその期待に応えるのか?このコラムでは、シリーズの誕生からこのモデルのおすすめポイント、成功の秘訣までを深掘りし、103.St.Ty.Hdを選ぶべき理由を明らかにします。ヴィンテージデザインの魅力と最新技術が融合したこの限定クロノグラフは、コレクションに新たな価値を加えるでしょう。

103.St.Ty.Hd

はじまりの時計は1960年代から

103.A
1960年代のパイロットクロノグラフ「103.A」

Sinn(ジン)の計測機能を搭載したクロノグラフ103は、創業初期の1960年代後半からそのフォルムを変えず、途切れることなく現在まで続くSinn(ジン)の不動の時計シリーズです。今では一般的なサイズのクロノグラフですが、'60年代当時はビッグウォッチと言われた直径41mmの時計ケースに、スイスのムーブメントメーカーの手巻き式Valjoux 72やValjoux 726を搭載したパイロットクロノグラフからスタートしています。初期モデルの103クロノグラフは、通称『トリコンパックス』と呼ばれる30分積算計を文字盤3時位置に配した3つのインダイヤルが下に並ぶレイアウト(下三つ目)が特徴で、1970年代まで生産が継続された歴史ある時計です。クロノグラフ103シリーズの最新時計103.St.Ty.Hdのデザインベースとなったパイロットウォッチ「103 C」もこの時代に誕生したクロノグラフです。

その後、1973年に自動巻きキャリバーValjoux 7750と手巻き式キャリバーValjoux 7760が発売されたことで、Sinn(ジン)のパイロットクロノグラフ103シリーズは新たな時代のプロフェッショナルスポーツウォッチへと進化しました。現行時計の「103.B.AUTO」や「103.B.SA.AUTO」と同じ、12時位置に30分積算計、6時位置に12時間計、9時位置にスモールセコンドを搭載した、3つのインダイヤルが縦に並ぶ『縦三つ目』の配列を持ったクロノグラフです。

ヴィンテージ ジン コレクターによる
クロノグラフ103についての考察

ここで、Sinn(ジン)のヴィンテージ時計を愛し、この手巻き式クロノグラフのデザインベースとなったパイロットウォッチ103 Cというオリジナルのクラシックモデルを所有するミケーレ・トリピをご紹介しましょう。彼はSinn(ジン)の初期クロノグラフを多数所有しており、とりわけ希少な限定時計やオールドムーブメントを搭載したクロノグラフ103シリーズに特化したコレクションで有名です。

103.KLASSIK
2012年に誕生したクロノグラフ「103.KLASSIK」

1980年代から機械式時計に魅了されていたトリピが、ドイツのパイロットウォッチブランドSinn(ジン)の自動巻きクロノグラフ「142(生産終了)」と出会ったのは1998年、フランクフルトの旧社屋のファクトリーストアでのことでした。その後、Sinn(ジン)のクロノグラフを中心に様々な時計をコレクションしていくトリピですが、2012年のバーゼルワールドで発表された「103.KLASSIK(完売)」に触発され、パイロットクロノグラフ103シリーズのコレクションを始めました。彼によれば『シュミット氏が103.KLLASSIK(完売)を市場に出すということは、このシリーズのクラシックなモデルの中に、何か素晴らしい製品があったに違いないと思ったのです』。その瞬間、プロフェッショナルなタイムピースへの情熱に火が点きました。それ以降、Sinn(ジン)社長ローター・シュミットもうらやむような人気の高い103クロノグラフのヴィンテージモデルを集めはじめました。このストーリーの詳細は以下の動画でご覧いただけます。

Sinn(ジン)のクロノグラフ103シリーズについては右に出るものはいないほどの知識で、自他ともに認めるヴィンテージ ジンコレクターのトリピによれば『103シリーズ初期、多くのメーカーは自社で独自のデザインをせず、スイスに委託して作られるのが一般的でした。つまり時計ケースや文字盤といったパーツは同じサプライヤーに依存していたため、作られる時計はすべて似通っていたのです』。当時の時計業界ではそのような商習慣がごく当たり前となっていました。

クロノグラフ103シリーズの新時代は1980年代にはじまり、現在もプロフェッショナルウォッチでは人気を誇るシリーズの源流となっています。Sinn(ジン)はそれまで各モデルの生産数は100本ほどに留まっていましたが、パイロットウォッチの人気ブランドになり、103.Aと103.Bの生産数を本格的に増加させました。
『大きな転換が訪れたのは、特に1970年台終わりから1980年代初頭です。1988年以降のモデルが現在のパイロットクロノグラフ103シリーズの前身と言えるでしょう』とトリピは言います。『ムーブメントが初期の手巻き式クロノグラフキャリバーのValjoux 72と726から、自動巻き機能を搭載したキャリバーのValjoux 7750や手巻きキャリバーのValjoux 7760へと進化し、それに伴い時計の文字盤も機能性に合わせたものへと変化しました。3つのインダイヤルが文字盤の下に並ぶクラシックなトリコンパックス配列に代わって、6時、9時、12時位置にクロノグラフ積算計と秒針表示の位置が変更されました。この時、このシリーズは特徴的なスタイルを確立しました。その確立されたスタイルはオリジナルコレクションの特徴として、現在もSinn(ジン)の人気コレクションを代表するクロノグラフ103シリーズのデザインの魅力になっています』

パイロットクロノグラフ103シリーズは誕生から50年以上の歴史を誇り、Sinn(ジン)は103シリーズを独自のものにするために改良を重ね、クロノグラフとしての確固たるスタイルを作り上げ、“Sinn(ジン)といえば103”とまで言われるおすすめのモデルになりました。そうして、満を持して手巻き式ムーブメントを搭載した、プロフェッショナル仕様のステンレススチール製103.St.Ty.Hdが誕生したのです。

継承されたデザインとこの時計の
現代的仕様

パイロットクロノグラフ103.St.Ty.HdのベースとなったSinn(ジン)の103 Cはごく少数しか生産されず、現在確認が取れているものは世界で4本という、とても希少性の高いクロノグラフです。103.St.Ty.Hdはこの103 Cをデザインベースとし、さらに様々な部分をモダナイズした世界1,000本の限定クロノグラフです。

トリコンパックスのダイヤルレイアウト
トリコンパックスの
ダイヤルレイアウト

オリジナルモデル103 Cに忠実に、103.St.Ty.Hdでは日付表示のないトリコンパックスのシンメトリーなバランスはそのままに、3時位置に30分積算計、6時に12時間計、9時位置にスモールセコンドを備えた、バランスの美学が息づく103クロノグラフの初期モデルの特徴的な3つのインダイヤルが文字盤の下に並ぶ配置を採用しています。

オリジナルに忠実なダイヤルデザイン
オリジナルに忠実な
ダイヤルデザイン

マットブラックをベースとしたライトイエローのインカウンター、ダークレッドのクロノグラフ秒針と分針、最初の10分が計測しやすいように赤と黒でデザインされた3時位置の30分積算計や、ベゼルの内側に配置した時速60kmから600kmまでの速度を計測可能にした平均速度を算出する計算尺であるタキメータースケールはオリジナルモデル103 Cを忠実に再現しています。また、オリジナル同様に山型ファセットを施したアプライドインデックスと針を備えた機械式腕時計は、高い気品と洗練されたクラシックデザインを併せ持っています。

手巻き式ムーブメント
手巻き式ムーブメント

オリジナルの103 C同様に、このプロフェッショナルクロノグラフには手巻き式ムーブメントを搭載しています。採用しているキャリバーはスイスのセリタ社製SW510 Mのトップグレードで、56時間のパワーリザーブ(駆動時間)を備えています。パイロットクロノグラフ103シリーズでは手巻き式ムーブメントの公式採用が約20年ぶりとなる歴史的モデルで、Sinn(ジン)のコレクションの中でも貴重な機械式時計だといえます。手巻き式の採用により、現行のアクリル風防搭載の自動巻きメンズモデルで15.9mmの厚みが、103.St.Ty.Hdでは14.8mmと若干薄型になっています。手巻き式ムーブメントは自動巻きムーブメントと異なり、時計を身に着けているだけではゼンマイが巻き上げられませんので、時計のリューズを手動でゆっくりと回し一定の速度で巻き上げることをお忘れなく。

強化アクリル製風防
強化アクリル製風防

オリジナルクロノグラフのクラシックなデザインを再現するため、103.St.Ty.Hdには衝撃耐性のある強化アクリル製風防を採用しています。アクリル製風防は、時間のかかる風防交換を必要とせず、ポリッシュによって簡単に傷を落とすことができ、常に実戦に使用できるため、1960年代にドイツ軍に指定されたミルスペック(Military Specification/軍用規格)としても知られています。

直径41mmのケースサイズ
直径41mmのケースサイズ

このクロノグラフ時計のケース直径は、オリジナルモデルや現行のレギュラーモデルと同様の41mmで、多くの人気ブランドも採用するメンズウォッチの基本的なサイズです。クロノグラフでありながら腕にしたとき馴染みやすいのは、手巻き式ムーブメントの採用でわずかながら抑えられたケースの厚みと、Sinn(ジン)の精密な技術力により完成形となった103シリーズのステンレススチール製ケースのシンプルな設計が理由かもしれません。

暗所での視認性も確保
暗所での視認性も確保

このクロノグラフ時計の時針・分針とインデックス、そして回転ベゼルの12時位置にあるキー・マークには夜光処理が施されているので、暗所でもしっかりと視認性を確保できます。

ドイツ工業規格DINに準拠
ドイツ工業規格DINに準拠

Sinn(ジン)は、ドイツ規格協会が制定した世界最高水準を誇るドイツ工業規格DINに従い、すべての時計を製作するプロフェッショナルブランドです。この103.St.Ty.Hdも例外ではなく、高い信頼性と最高水準を誇るドイツ工業規格DINに準拠し、4,800A/mの耐磁性と20気圧(200メートル)の防水性能を実現しています。

コントラストステッチを施したボアレザーベルト
コントラストステッチを施した
ボアレザーベルト

この時計に装着されたボアレザーストラップには、Sinn(ジン)の本拠地フランクフルトが位置するヘッセン州に生息する野生のイノシシ革を使用しています。ドイツでは狩猟時期が決められており、年によって捕れる量が異なるため時計に使用できるレザーも限られます。時計にはデザイン性を高めるレッドステッチを施したグリーンのボアレザーベルトが装備され、クロノグラフ秒針の視認性を引き立てます。さらに細かな飾り穴をあしらったブラックのボアレザーベルトも付属されます。柔らかく装着感が高い時計用ボアレザーベルトは、メンズウォッチにおすすめです。

付属のブラックレザー 装着例
付属のブラックレザー
装着例
世界限定1,000本の証
世界限定1,000本の証

歴史的にみて名高いシリーズにふさわしい103.St.Ty.Hdは、世界1,000本の限定のスペシャルモデルです。ケースの裏面中央には『EINE von 1000(1,000本のうちの1本)』という文字が刻まれており、希少性を高めています。20気圧の耐圧性能と減圧耐性を備え、ステンレススチール製ケースを採用したプロフェッショナルパイロットクロノグラフです。

限定クロノグラフの成功の秘訣

Sinn(ジン)のブランドを代表するクロノグラフ103の専門家、ミケーレ・トリピのパイロットウォッチ103.St.Ty.Hdに対する評価はどうでしょうか。
『103.St.Ty.Hdは、人気が出るであろう素晴らしい時計だと確信しています。比べてみるとオリジナルに近い機能とデザインを備えていることがわかります。時計の文字盤と針は103 Cと同じアナログ表示で、日付表記もありません。Sinn(ジン)はクラシックなものを現代的にアレンジすることで、歴史的なスピリットを保持することに成功しています。これらの要素は、コレクターにとってブランドの魅力を高める非常に興味深いポイントです』

ミケーレ・トリピによると、この103シリーズの成功の秘訣は、その歴史的なつながりにあるといえます。デザインと特徴的な機能において、最も深いルーツに忠実であり続けたのです。変更は現代の技術の名のもとに、時計の内部にのみ手を加えています。
『103シリーズの一貫性こそが、時計コレクターに感動を与えるのです』と彼は続けます。『私はSinn(ジン)というブランドをこのようなクラシックな時計から思い浮かべますが、実はそれは私だけではないと思っています。その点で、機械式クロノグラフ103.St.Ty.Hdは、完璧に完成された時計です』

103.st.ty.hd

『Sinn(ジン)の時計は一度集めはじめたら止められません』とミケーレ・トリピは言います。
常にコレクションの最前線にあり
何世代もの時計愛好家を楽しませてきた伝説的タイムピース103は
名だたるブランドのクロノグラフと肩を並べるパイロットウォッチです。
この103.St.Ty.Hdは専門家やコレクターはもちろん
新たなジン ファンの心に火を点けるに違いありません。

ミケーレ・トリピ

ミケーレ・トリピは1980年代から機械式腕時計に魅了されてきました。彼が初めてSinn(ジン)というブランドを知ったのは1998年のスペースクロノグラフという別名を持つモデル142でした。しかし、彼自身の特別なヴィンテージウォッチへの情熱に火をつけたのは、機械式クロノグラフの「103.KLASSIK」でした。2012年以来、彼は歴史的な時計の熱心なコレクターです。現在、彼は30本以上の希少な機械式腕時計をコレクションしています。そのうちのひとつが、世界に4本しか存在が確認されていないパイロットクロノグラフ103 Cです。彼のウェブサイトでは、彼の貴重なコレクションを見ることができます。