Letter from Tomás StankeEZM7開発協力者のメッセージと開発秘話

EZM7開発協力者
ドイツ、ハッティンゲン消防署上級消防監査官トマーシュ・シュタンケのメッセージと開発秘話

EZM7開発協力者のメッセージと開発秘話 EZM7開発協力者のメッセージと開発秘話

私は19年以上消防士として勤務しており、自分の天職と自負しております。1991年にボーフムの消防署で中級職としてスタートし、チーフになるための訓練を受けました。およそ6,000時間も救急救命サービスに従事しさまざまな経験を積むと同時に、教育プログラムにも積極的に参加しました。救急医療隊員、グループリーダーを経て、2003年に消防監査官となり、行政上級職への昇進を果たしました。引き続き、チーフガード、消防士学校長を歴任、任務遂行やリスク評価についての執筆、消防学校の新入生トレーニングプログラムの監修を行いました。ハッティンゲンへ異動になってからは、消防活動の総指揮、安全性対策強化、および人事部長も務め、2007 – 2009年の間に労働安全マネジメントの資格を取得しました。

私は16歳のころから時計に夢中でした。時計への情熱は、時計市場を眺めて技術や価格帯を研究したり、時計専門誌や広告を読んだり、時計フォーラムへ寄稿したりといったことでは満足できないほど強いものでした。キャリバーや生産技術についても学びましたが、最終的には消防士として生活するうえでいかなる状況にも対応できる時計を見つけることに情熱を傾けました。あらゆる時計ブランドを研究しさまざまな時計に出会いました。

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職業柄、現場で使用する腕時計には多くの負担がかかるため、いろいろな時計を試してみました。装着感がよく、どんな状況でも視認性を確保でき、堅牢なつくりで操作が簡単、という条件を満たす時計を探しつづけました。多くの時計は火事現場で遭遇する熱波、水圧、スチーム等のストレスに耐えることができませんでした。

ある時私は、自分の専門知識と経験を生かして消防士専用のミッションタイマーをデザインすることを思いつきました。日々の消火活動で要求される機能を備え、ドイツ消防業務マニュアル(FwDV7, FwDV500)に記載されているミッション時間を読み取ることができる時計をつくりたいと考えたのです。

このマニュアルにはあらゆる活動におけるミッション時間や工程が事細かに記されており、これをもとにダイヤルとベゼルのデッサンをしてみました。ダイヤルには重要な時間設定を表す図形を配し、ベゼルで分針と組み合わせて残り時間をカウントできるようにしました。機能を明確にするために、ベゼル上にミッション時間を信号機と同様に赤、黄、緑で色分けして配置しました。

私の企画を実現できるメーカーとして思いついたのがジン社でした。その当時、私はジンの857を使用しており、材質、テクノロジー、防水、視認性その他機能において消防活動での使用に耐えうる時計でした。857にとても満足していたのですが、パフォーマンスの高さにもかかわらず、このモデルはやはりパイロット・ウォッチだったのです。私はなんとか良い時計ができないものかと、消防士用の時計をつくる考えにますますのめり込んでいきました。

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2009年6月、私はとうとう勇気を振り絞ってジン社へメールを送りました。すぐに返事が来て、ローター・シュミット氏と電話でお話しした後、8月にフランクフルトでお会いすることができました。その時、シュミット氏と2人の担当者に私のアイデアを説明したところ快諾してくださり、開発への話し合いが始まりました。

シュミット氏が握手しながら「すばらしい時計を作りましょう」と言ってくださった時のことは忘れられません。また、2009年12月に最初のドラフトが出来上がったときは興奮しました。ジンの技術者は私の考えを完璧に理解し、それをデザインに表現してくれました。その後も私はたびたびジン社とミーティングを行い、細かい点について改良を重ねました。

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20回以上の改良を積み重ね、ようやく最終バージョンが出来上がりました。開発に深く関わることで、特殊機能をもった時計の開発についての知見を得ることができました。ひとつのプロジェクトを完結させるためにこれほどの時間を費やすものかと驚きを隠せません。

私がジン社に対して抱いていた優れたメーカーという印象が間違いではなかったことが、見事に証明されたと思います。ジンの技術者たちは、消防活動という専門外の分野にも関わらず開発のために心血を注ぎ、高い技術力を駆使して完璧な腕時計を完成させました。この時計の開発に関わってくださったすべての関係者に尊敬の意を表したいと思います。多くの消防士たちが、私の専門知識が反映されたこの時計を身につけて消防活動に役立ててくれたら、これほどうれしいことはありません。

技術者の情熱が結集した特殊時計と消防団の結束があってこそ、危険な現場での安全を確保することができるのです。

トマーシュ・シュタンケ

完成したミッションタイマーEZM7とそのブラックモデルEZM7.S

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