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ジン温故知新第6回

 皆様、いかがお過ごしでしょうか?かなり遅くなりましたが、本年も宜しくお願いいたします。

EZM4

 今年初めて温故知新としてご紹介するモデルはEZM4です。2001年から2005年まで発売されました。 EZMシリーズについては皆さんご存知かと思いますので、この場ではお話しいたしませんが、ウラ話的な話題を一つ。EZMシリーズは1997年に1と2が発表されてスタートしました。1と2と来て次は3ですが、先に発売されたのはこのEZM4なんです。EZM3も2001年の発売ですが、この年のバーゼルフェアで発表されて実際に市場に導入されたのはその年の夏ごろだったと記憶しております。EZM10が2011年に発表されて、EZM9は2014年の発表とEZMのナンバリングにあまり規則性が無いのがジンらしいと言えばらしいですが。

ドイツ消防救急部隊

 他のEZMシリーズと同様にこのモデルもプロフェッショナルユーザー向けに明確な使用目的があります。それはドイツ消防救急部隊用です。当時発売されていたドイツのファイヤーレスキュー専門誌「Feuerwehr Magazine」と「Retturngs Magazine 」との共同開発によって設計されました(現在もこの雑誌があるかは未確認です)。それとこれは日本ではあまり認知されなかったのですが、アキレスと言うニックネームがありました。これはこのモデルの開発に携わったフランクフルト消防隊に所属していたエルメント・アキレス教授に由来しています。フランクフルト消防隊、特殊救助隊の採用を皮切りに、各地の消防部隊、救助部隊に制式に採用されました。

 では時計を見ていきたいと思います。ベースモデルは157.Mです。使用ムーブメントは今となっては憧れのレマニア5100です。157には軽くて耐蝕性に強いチタンケースを使用したモデルもありましたが、チタンは金属との接触で火花が出る可能性があるためあえてステンレスケースの157を採用しています。もし火災現場にガスや化学薬品があった場合は大きな災害に繋がりかねないからです。隊員が使用しているガスマスクや空気(酸素)ボンベにも火花が散らない素材が選定されているそうです。

EZM4

 一目見て気が付くカラフルなインデックスがこのモデルの最大の特徴です。これは救出部隊の作戦行動のタイムスケジュールを示しており、イエローとレッドの色分けは隊員が使用している空気ボンベの最低持続時間である30分に基づいています。突入時にクロノグラフをスタートさせ突入から救出現場に到達するまで最大で15分(イエローゾーン)、現場に到着次第すぐに要救助者を探して救出しそこから脱出するまで15分(レッドゾーン)。全ての過程を終了するまでに全体で30分の時間制限の過程時間を瞬時認識する事が出来ます。
 救出隊員はもちろんのこと、指示を出す指揮官も携行して濃い煙幕や夜間の為に視認性が低下している隊員達に、現場の外からEZM4の情報をもとに無線で救出活動の指示を出しています。

EZM4

 基本的な性能はベースモデルの157.Mに準じますが、30分以上の作戦行動を考慮していないため、EZM1と同様に157には備えていた12時間積算計と24時間表示を除いています。スモールセコンドは時計そのものが動いているかを瞬時に判断するため、日付と曜日表示は現場でレポートを作成するために必要と判断しそれぞれ残しています。12時の位置にドイツ語で「消防救急隊」の文字、そして6時の位置にはEZMを示す「EINSATZZEITMESSER」と当時は使用を許可されいたトリチウム夜光を表す3Hマークが、文字が暗い場所で視認性を妨げない赤い文字でそれぞれプリントされています。 12時のインデックスデザインと左リュウズとプッシュボタンの配置はEZMシリーズのマストアイコンです。また、ベースモデルではタキメーターを備えていましたが、EZM4ではパルスメーターに変更されています。なぜそうしたかは皆さんのご想像通りです。

 発売当時は見た目のインパクトとバックグランドの面白さで好評でした。実際の消防関係者の方が購入されたとのお話を多く耳にしました。今に続くEZMシリーズを認知させたモデルの一つと言っても過言では無いと思います。レマニア5100の製造終了に合わせて惜しまれながらEZM4も2005年に生産終了となりました。今でも復刻を望む声が多くあるモデルの一つです。

EZM7

 ジンが開拓した消防救急隊用の時計はその後2010年に発売されたEZM7に繋がれて行きました。よりパワーアップしたプロフェッショナルウオッチとして蘇ったのです。

 「こんな時計作ってだれが買うのだろう?」と思われる時計でも、必要とする人達がいればそのために開発するジンの姿勢が表れているモデルですね。この思いを分かって頂いている人達がたくさんいらっしゃる事に本当に感謝でしかありません。

 今回も最後までありがとうございました。
余談ですが、EZM4への質問で一番多かったのが「消防隊用なら火に強い時計ですか?」です。答えは残念ながらNOです。火の無い現場にも消防救急部隊は出動しますし、火災現場での救助活動時には外にいる指揮官が指示を出していますので。

消防救急部隊
消防救急部隊