Mail magazine special contents vol.46

ジン温故知新第10回

356.EURO FLIEGER
356.EURO FLIEGER

 いつも温故知新を応援していただきありがとうございます。今回も駄文で失礼します。ジンをイメージする色ってなんでしょうか?私は黒と白、そして赤をイメージします。この3色の組み合わせで多くのモデルが構成されていると思います。いかがですか?今回ご紹介する356ユーロフリーガー/356.EURO FLIEGERの色は黒と白そして黄色です。

356.FLIEGER
イエローに発光する蛍光仕上げの時・分針とインデックス
イエローに発光する蛍光仕上げの時・分針とインデックス

 356ユーロフリーガーは2000年に日本限定モデルとして発表された300個の限定モデルです。最初に目につくのは針とインデックスに使用された黄色ではないでしょうか。良い意味でジンらしくないモデルです。それだけ印象深いモデルなのです。この黄色は単にデザインを重視したものではありません。1990年代に仏独で開発されたヘリコプター「ユーロコプター」。そのコックピットにはジン社製のオンボードクロックが搭載されていました。それは針とインデックスが全て黄色でした。この黄色はコックピット内の特殊ランプでイエローに蛍光する仕様になっていました。この仕様をユーロフリーガーでも採用しています。(ユーロコプターのオンボードクロックをそのまま腕時計にしたモデルが以前にご紹介した656.BEAMSです)ベースモデルは356.FLIEGERです。

ルーツとなった最初の356

356.FLIEGER

 356のルーツは1996年に日本の企画で発表されたモデルです。1940年代を彷彿とさせるクラシックなダイヤルデザインに、バルジューの手巻きムーブメントを搭載した300個の限定でした。直ぐに完売したことを良く憶えています。それから数年後、ジンの新しいカタログを見たらなんと同じモデルがレギュラーモデルとして載っているではありませんか!慌ててドイツに問い合わせたところ(その当時はFAXでした)、356を見たドイツのジンファンからシリーズモデルにして欲しいとの声が多く寄せられたそうでレギュラー化したとの事(356.FLIEGER)。この事は日本には事前に全く知らされていませんでした。日本の企画がドイツでも受け入れられた事は嬉しいですが、ちょっと複雑な気持ちがあったのも事実です。「手巻きじゃなくて自動巻きにしたから問題ないでしょう」と言われました(FAXで)。ドイツも日本もなんとも大らかな時代でした。

 その数年後に356ユーロフリーガーを発表することになります。ベースモデルに356を使用した事は、売れていたモデルだったのもその大きな理由ですが、再度日本の意地と可能性をドイツに見せたかった気持ちが少しあったのかもしれません。

初代356ユーロフリーガー

 それでは時計を見ていきましょう。ケースと風防のムーブメントの仕様はベースの356と同じです。当時、EZMシリーズの成功でジンのアイコンの一つになってきた左リューズを採用しています。その後の日本限定のいくつかは左リューズを採用しており、左リューズが売れるブランドの一躍を担っています。

356.EURO FLIEGER
356.EURO FLIEGER

 スモールセコンドを外す事で、スモールインダイヤルを大きく配置する事ができました。38.5ミリの小振りなケースサイズにも関わらずツーカウンターが強調されています。針とインデックスはイエローで、紫外線ライトに当てるとイエローに発光します(夜光塗料ではないです)。スモールインデックスの目盛りを細かく刻むことでイエローのインデックスを目立たせています。全体的にシンプルで必要最低限の刻時機能が、時計の印象を深いものにしています。ジンの多くのラインナップ中でも一度見たら忘れられないモデルの一つではないでしょうか?それまでのジンとはかなり毛色が違ったモデルでもあり、企画段階ではホントに売れるのか?といった不安もありましたが、発売後は予想に反して多くのジンファンの皆さまに受け入れて頂きました。

356.EURO FLIEGER

待望のセカンドモデル

 初代、356ユーロフリーガーが発売された7年後の2007年に、ジンファンの要望に応える形で356ユーロフリーガーII/356.EURO FLIEGER.IIとして復刻モデルが発表されます。

356.EURO FLIEGER.II
356.EURO FLIEGER.II

 基本的なデザインはそのままに風防をサファイアガラスに変更したスペックアップモデルに仕上げました。ダイヤルに描かれたロゴを初代モデルより太く大きくすることで、全体的に力強いものにしています。限定本数は200本。発売後の反響は初代モデルのそれを上回るものでした。IとIIの両方を所有する方も多くいらっしゃると思います。

356.EURO FLIEGER.II

IとIIの両方を所有する方も多くいらっしゃると思います。

二つの日本限定モデル

 この356ユーロフリーガーの発表以降、毎年一つから二つの日本限定モデルを発表しています。その多くのモデルが日本のみならず海外のファンにも受け入れていただいております。僭越ながら私自身その全てのモデルの開発に携わってきました。そのバックグラウンドやビジネス的な成果などどのモデルにも思い入れがありますが、356ユーロフリーガーが特にその思いが強いです。このモデルの成功が無ければ、その後の日本限定モデルはそれほどではなかったかもしれません。日本限定モデルのルーツでもあり、日本でのジンのマイルストーンとも言えるモデルなのです。

二つの日本限定モデル

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回の温故知新も楽しみにしていて下さい。