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ジン温故知新vol.1

 今回から不定期でスタートしますジン温故知新。1986年にジンが日本に上陸して30数年。その歴史の中でジンを代表するモデルや印象に残ったモデル、ユニークなモデルなどを、ご紹介していきたいと思います。初上陸からジンに関わる仕事を今も続けている私が担当いたします。どうぞお付き合いください。

ジン温故知新

 記念すべき第一回はジンの定番モデル103です。「最初は156でしょう?」とのご意見が容易に想像できます。確かに最初に日本で販売をスタートしたモデルはこれぞジンの時計と言えるモデル156Bですが(当時はこの1モデルしかありませんでした)、156Bから遅れること数か月後にこの103が発売になりました。ご存知のように156Bは使用していたレマニアムーブメントの生産終了に伴い、時計自体の製造も終了していますが、この103は現在もその仕様を変えながら作られており、デザインコンセプトは現在に脈々と受け継がれているジンを代表するモデルと言えます。

ジン温故知新
写真左:103ファーストモデル、写真右:現行の103.B.AUTO
ジン温故知新

 ケース径は38.5ミリで現行モデルと比べて2.5ミリ小さいです。今となってはかなり小ぶりな感じを受けますが、当時はこれでも大きな時計と言われていました。ムーブメントは手巻きのバルジュー7760。ベゼルは現行の103.B.AUTOと同じアルミ製の両方向回転タイプです。リューズはねじ込みではありませんが、一応20気圧防水になっています。ケースバックには英語で仕様が刻印されています(現行品は全てドイツ語)。“サブマリナーケース”と刻印されているのも珍しいですね。多分防水ケースである事を強調したのではないでしょうか?ダイヤルと裏蓋に“メイド イン スイス”と入っているのもこの当時の時計ならではです。リューズとプッシャーは今見るとクラシックなデザインでリューズガードが無くSのロゴも入っていません。ダイヤルは視認性と実用性を重視した典型的なコックピットクロノグラフのデザインです。スモールセコンドと30分、12時間の各積算計を備えており、曜日表記は無く日付表記だけです。それがインデックスと同じ位のサイズでパッと見ると日付がとても目立つのはご愛敬でしょうか?

ジン温故知新
103ファーストモデル
ジン温故知新
現行の103.B.AUTO

 ファーストモデルは2時の位置ジンのロゴが申し訳程度に入っており、現行モデルと比べてそのサイズが格段に小さくちょっとひ弱な印象を受けます。ブランドを売るよりは、視認性を損なわないようロゴは目立たなくしたのかもしれません。ダイヤルの全体的なバランスは悪くないです。(個人的には日付無しならもっと良かったと思いますが)

 当時のカタログやパンフレットを見ると103シリーズには他のバージョン違いのタイプが存在していますが、なぜこのタイプが日本に入って来たのか今となっては謎です。憶測ですが、156.Bが自動巻きだったので手巻きのモデルを選んだのかもしれません。また、手巻きモデルの方が安かったのも理由の一つと思われます。記憶が定かではありませんが、当時は7万円位で販売していたと思います。当時販売していたモデルはこの103と156しかありませんでしたので、広告や雑誌記事はこの2モデルしか掲載されませんでした。因ってジンと言えば156と103の印象が日本の市場に強く刷り込まれ、103については現在でもベストセラーモデルとなっています。「最初に手にするジンは何がいいですか?」のご質問にジンショップの多くがこの103シリーズをお勧めすると思います。毎日使っていても飽きの来ない実用性だけを重視したデザインや機能は、多くの日本人がドイツ製品に抱くイメージに近いものがあるのではないでしょうか。現行の103シリーズでは、ファーストモデル同様にアルミ製のブラックベゼルとアクリル製風防を特徴とする103.B.AUTOと、ステンレススチール製ブラックベゼルとサファイアクリスタルの風防を搭載した103.B.SA.AUTOが代表モデルです。

 当時の日本でのジンを取り巻く環境や今だから言える話など、これからも色々とお伝えしていきたいと思いますので、第2回目以降もどうぞお楽しみに。今後ともジン共々宜しくお願いします。