Columnコラム
ジン65年の軌跡を辿る
アニバーサリー時計の系譜
Sinn(ジン)は2026年11月、ブランド創立65周年という大きな節目を迎えます。これを記念して発表した新たな903シリーズの時計は、ブランドの歩みを象徴する存在です。Sinn(ジン)は近年、5年ごとに特別な限定時計を発表してきました。このコラムではチタン製の最新記念モデル「903 Ti II Anniversary」にも触れつつ、2001年に40周年を祝して誕生した記念モデル「356.JUB」以降、ジンが節目ごとに送り出してきたアニバーサリー時計の系譜を辿ります。それぞれの時計にはSinn(ジン)の基本哲学と時代の空気が刻まれています。

40周年アニバーサリー時計は
356のクロノグラフ

2001年、1,000本の限定で製作したSinn(ジン)のブランド創立40周年の記念時計「356.JUB」には、非常に成功したSinn(ジン)の人気モデル「356.FLIEGER」をベースに選び、文字盤の色はグレーを採用しました。Sinn(ジン)では記念モデルにふさわしいカラーを追求した結果、当時のドイツ時計業界では珍しかったことと、Sinn(ジン)のブランドカラーであるアンスラサイトにリンクする色であったことからグレーを選びました。Sinn(ジン)のこの記念時計では、直径38.5mmのサテン仕上げのステンレススチール製時計ケースに、「356.FLIEGER」と同様のアクリル風防とスイス製Valjoux 7750ムーブメントを搭載しています。文字盤3時位置には「1961-2001」の文字を記したクラシックなパイロットクロノグラフで、Sinn(ジン)の歴代FLIEGERコレクションの中でも人気モデルとして高い評価を得ています。

さらに、同年Sinn(ジン)は別の記念時計コレクションとしてフランクフルトファイナンシャルシリーズから40本の限定で製作した18Kホワイトゴールド製の「6000.JUB」も発表しています。この2001年という年は、ドイツでは流通の効率化とEU市場統合による他国からの輸入品が増加する中で価格競争の激化が進み、製品コストとスピードで評価される傾向を強めていました。そうした環境下で、Sinn(ジン)は独自のテクノロジー「ディアパル」を開発し、記念時計6000.JUBに初搭載しました。時計ムーブメントの脱進機の摩耗を抑え潤滑油に依存しないこのSinn(ジン)独自の機構は、腕時計のオーバーホール間隔を延ばし長期にわたる精度安定を実現するジン・テクノロジーのひとつです。効率化の波に対し、Sinn(ジン)はこの腕時計に“使い続ける価値”という時間軸で答え、その耐久性と魅力が評価されるおすすめ人気モデルとなったのです。
そして、このグレー文字盤はその後の記念モデルにも継承され、Sinn(ジン)のアニバーサリーシリーズを象徴するデザイン要素となりました。
2006年のジン45周年は
チタン製の203
Sinn(ジン)ブランド創立45周年の2006年には、記念時計としてダイバーズウォッチの203を採用しました。2006年という年は、ドイツの新政権誕生による景気回復の兆しが見え、2006 FIFAワールドカップ ドイツ大会の開催でベルリンやフランクフルトをはじめ国内消費が大きく活性化した年でした。「ドイツらしさ」への誇りとともに”Made in Germany”が再評価され、高級時計や工芸品の輸出も伸長。マイスター文化に裏打ちされた技術が、改めて価値として認識され始めた年でもありました。こうした追い風の中、創立45周年を迎えたSinn(ジン)が発表した記念時計のダイバーズウォッチ「203.JUB」は、Sinn(ジン)のマイスター資格を持つ時計職人の手による確かな製作と先進素材を融合し、Sinn(ジン)の哲学と時代の気運が結実した象徴的な一本といえます。

Sinn(ジン)のチタン製203シリーズの時計は、1995年に社長のローター・シュミットがSinn(ジン)を引き継いで1年たった頃に最初のモデルを発表した、30気圧の防水性能を備えたダイバーズウォッチのシリーズです。当時、チタンは腕時計のケース製造において特別な素材だったため、Sinn(ジン)は記念時計への採用を決定しました。Sinn(ジン)の記念モデル「203.JUB」は、直径41mmのチタン製ケースにValjoux7750ムーブメントを搭載し、Sinn(ジン)ブランドの45周年にちなみ450本限定で生産しました。クラシックなグレーベースの文字盤はスモールダイヤルをホワイトにすることでクロノグラフの視認性を高めており、文字盤の3時位置にはSinn(ジン)の45周年を示す「1961-2006」の文字を記しています。

この時は、Sinn(ジン)の本社所在地であるフランクフルトの代表的なランドマークのひとつで、切妻屋根の美しい歴史的建物のレーマー(市庁舎)において、ドイツのパートナーやSinn(ジン)の従業員とともに45周年を祝いました。
203シリーズは、現在ではケース直径をわずかに大型化した「206シリーズ」に生まれ変わり、203の時代にはなかった現代的仕様で再設計しています。
盛大な式典を行った50周年

Sinn(ジン)のブランド創立50周年の2011年、ドイツは欧州債務危機の影響下にありながらも堅調な経済基盤を維持し、ドイツ製品への信頼は世界的に高まりました。とりわけアジア市場では高価格帯の機械式腕時計が需要を牽引し、ドイツ時計産業は大きな成果をあげます。品質や耐久性といった本質的価値が選ばれる時代において、創立50周年を迎えたSinn(ジン)はまさにブランドの真骨頂ともいえる、Sinn(ジン)らしいクラシックなフェイスにプロフェッショナル仕様として耐久性を高めた新たなパイロットクロノグラフ「358」シリーズを発表。50周年を祝う腕時計として「358.JUB」が完成しました。

このモデルのためにSinn(ジン)が開発した独自の新キャリバーSZ05は、時計の操作性を考慮してクロノグラフの積算計を通常の30分から60分に変更したムーブメントです。「60」の目盛を持った9時位置の時刻表記のスモールセコンドと3時位置のクロノグラフ積算計の区別がしやすいように、積算計の針はクロノグラフ秒針に合わせたデザインとなっています。限定数は500本。横2つ目のバイコンパックスというクラシックなスタイルを持った魅力的なメンズウォッチで、このモデルでも文字盤の6時位置にSinn(ジン)の50周年を示す「1961-2011」の文字が記されています。
この50周年イベントでは、Sinn(ジン)はメディア、各国のパートナー、友人、政治家をフランクフルトに招待し、大規模な式典を開催しました。この式典ではウィーン交響楽団による演奏と舞踏会が行われ、ライン・マイン・オーケストラが1920年代の歌曲を披露しました。Sinn(ジン)のスタッフにとっても忘れられない思い出となったようです。
3つの時計が誕生した
55周年の2016年
2016年のドイツは、安定した経済成長を背景に高級品市場が成熟し、単なる価格やスペックではなく「本物志向」への転換が明確になった年でした。製品の歴史や製法、哲学といった背景に対する関心が高まり、長く使える価値あるものが選ばれる時代へと移行していきます。その象徴的な出来事として、時計業界ではSinn(ジン)が中心的役割を担い誕生したパイロットウォッチ規格DIN8330が誕生しました。これはパイロットウォッチの機能性や精度、防水性能といった信頼性を厳格に定義したものであり、腕時計における“本質的価値″を可視化する試みでした。


こうした潮流の中で創立55周年を迎えたSinn(ジン)は、記念コレクションとして3つの特徴的なモデルを発表しました。スプリットセコンドクロノグラフを搭載した300本限定の「910.JUB」は、メンズ向けのシリーズとしてクロノグラフの制御にコラムホイールを採用した特別なコンプリケーションモデルです。このモデルではケースバックに「1961-2016」の文字が刻まれています。
一方で、実用性を重視したSinn(ジン)の人気シリーズ556から1,000本限定でアンスラサイト文字盤の「556.JUB」を、さらにドイツ製にこだわり製作した6200シリーズのホワイトゴールド製モデル「6200.WG.Meisterbund.I」を発表しました。このモデルはわずか55本の限定で、ドイツメーカー3社による技術力を結集したSinn(ジン)のクラシックモデルの傑作です。6200.WG.Meisterbund.Iの詳細はこちらでご覧ください。
それぞれが、Sinn(ジン)の技術と哲学を異なる角度から体現し、実用性・耐久性・機能美というブランドの核を改めて提示しました。規格策定という産業的貢献と製品としての完成度により、Sinn(ジン)は、“選ばれる理由を持つ時計″としての存在感を一層強め、ブランドの歴史に新たな節目を刻みました。
ジンの60周年を祝うのは
144.ST.S.JUB.II

2021年のドイツは、コロナ禍の影響下にありながらも経済は徐々に回復基調に向かい、人々の価値観は「量」から「質」、そして長く使える本質的価値へとシフトし、ヴィンテージや限定コレクションへの注目が高まりました。高級時計や工芸品の分野でも、耐久性や信頼性、ブランドの哲学が重視される傾向が強まりました。そうした中でSinn(ジン)はブランド創立60周年を迎え、これまで培ってきた技術と哲学を体現するアニバーサリーモデル「144.ST.S.JUB.II」を発表しました。過酷な環境下でも機能を維持する実用性と、長期間の使用を前提としたモノづくりは、不確実な時代においてこそ選ばれる価値として、Sinn(ジン)の存在意義を改めて示しました。

60周年の記念にSinn(ジン)が選んだのは、メンズにも人気のヴィンテージ感が際立つ、Sinn(ジン)のコレクションの中でも長い歴史を誇る144シリーズのクロノグラフでした。1974年にその最初のモデルが誕生したシリーズで、文字盤外周に平均速度を算出できるタキメーターと心拍数を計測するパルスメーターをひとつに組み込んだユニークなモデルです。記念モデルの「144.ST.S.JUB.II」は、ステンレススチール製のケースとブレスレットに、ジン・テクノロジーのひとつである高い耐傷性を実現するテギメント加工をベースとしたブラック・ハード・コーティングを施し、長期にわたり腕時計の機能性と精度を維持する除湿機構Arドライテクノロジーも採用しています。

Sinn(ジン)はこの腕時計にホワイトカウンターとクロノグラフ関係に赤針を採用し、60周年を祝してタキメーター/パルスメーターの「60」の数字も赤で統一しています。600本限定のこのモデルのケースバックにはシリアル番号とともにSinn(ジン)の60周年を示すドイツ語「60 JAHRE」と「1961-2021」の文字が刻まれています。
144シリーズは、現行モデルの「144.ST.SA」でも基本スタイルを変えることなく、Sinn(ジン)を代表するスポーツクロノグラフとして人気を博しています。
65周年を祝う最新作は
903シリーズの限定モデル

2026年、確かな品質と長く使える価値を備えた製品が選ばれる時代に、Sinn(ジン)がブランド創立65周年記念として発表した最新作は、時計愛好家やSinn(ジン)のコレクターにとって特別な意義を持つ903シリーズの限定モデル「903 Ti II Anniversary」です。世界でわずか500本限定のこの記念モデルは、Sinn(ジン)の創業35周年モデル「903 J」の象徴的デザインを受け継ぎながら、現代テクノロジーによって大きな進化を遂げたメンズウォッチです。


時計ケースには軽量かつ高強度なグレード5チタンを採用し、41mm径でありながら軽量で快適な装着感を可能にします。ダークブルーのサンバースト文字盤には、回転計算尺と対数目盛を備えたナビゲーション・クロノグラフの伝統意匠が息づきます。さらにSinn(ジン)独自のDSPテクノロジー(※)により、外周ベゼルの直接操作と20気圧防水をハイレベルで両立しています。内部には約60時間パワーリザーブを備えたコラムホイール式クロノグラフムーブメントを搭載し、精度と信頼性を高次元で両立しています。伝統への歴史的経緯、素材革新、実用性能--そのすべてを結晶させた、65周年にふさわしい魅力的なアニバーサリーモデルです。

標準装備のピュアチタン製ブレスレットのほかに、バックル付きのシェルコードバンストラップ1本を付属し、ベルト交換工具などとともにボックスに納められます。
※DSPテクノロジー:特殊開発の複合材料と特別な潤滑グリースを用い、シール部品と時計ケースを精密に組み合わせることで、リューズなしの直接操作による回転ベゼルの操作性と、高い気密性を両立させるSinn(ジン)独自の技術。
Sinn(ジン)のアニバーサリー時計は、ブランドの歴史と技術革新を体現しています。
このコラムを通じて、Sinn(ジン)が節目ごとにどのように特別な時計を生み出してきたか、
その背景にある哲学を感じ取っていただけたでしょうか。
特にチタン製の65周年記念モデル「903 Ti II Anniversary」は、
Sinn(ジン)の長い歴史と高い技術力を象徴する逸品です。
903シリーズにはほかにも様々なバリエーションがありますので、
Sinn(ジン)の正規販売店にてぜひ実物を手に取ってそのデザインや機能性を確かめてみてください。

