Sinn Technologyジン・テクノロジー

セラミックス同等以上の硬度を誇る耐傷性  —  テギメント/ブラック・ハード・コーティング

テギメントとは、窒素を使用した浸炭加工を時計のケースに施すことにより鋼材の表面に炭素分子を拡散・浸透させ、焼入れして硬化させる技術です。この技術ではコーティングは使用しておらず、素材そのものを硬化しているため、その傷の付きにくさでは基盤となる素材の硬度をはるかに上回ります。

このテクノロジーが初めて紹介されたのは、2003年、バーゼルで行われた国際時計・装飾品見本市でした。当初、テギメント・テクノロジーはステンレススチール製ケースにのみ使用されていましたが、現在ではチタンでも採用され、マットやポリッシュ等、ケースの仕上げの種類を問わず可能です。

ブラック・ハード・コーティング

テギメントを基盤としたPVDコーティングのことを、ジンでは“ブラック・ハード・コーティング”と呼んでいます。現在ではブラックPVD仕上げには必ずテギメント・テクノロジーを併用しています。ブラック・ハード・コーティングでは、テギメント層の硬度は連続的な性質を有します。つまり、表面では硬度が高く、それが徐々に材質の基本硬度へと移行していきます。こういった性質により、ケース本体から着色層が剥がれるといった現象を起こすことなく、PVDコーティングを施すことが可能となります。

テギメント

エッグシェル現象の原理

PVDコーティングによって施された着色層は非常に高い硬度を有します。コーティング層と基材の間で硬度が急激に変化するケースでは、何らかの負荷を受けると、コーティング層が割れてしまう傾向があります。硬い殻( PVD着色層)が柔らかいコア(ケース素材)の上に直に乗っているからです。一点に集中した力が加わると、基材がたわみ、外側の層を十分に支え切れなくなってしまうのです。これを「エッグシェル現象」と呼びます。これに対し、テギメント加工を施した表面硬度であれば、コーティング層も支えることができます。エッグシェル現象も防止され、着色層の磨耗も大幅に低減します。