Test and Certifications

Technical Standard for Pilot’s Watches (TESTAF)パイロットウォッチのための技術基準

TESTAF : 世界初のパイロットウォッチの標準規格

アーヘン応用科学大学宇宙航空学部のフランク・ヤンザー教授とジン社が共同で数年にわたるリサーチプロジェクトを行い、TESTAFというパイロットウォッチ標準規格を開発しました。TESTAF認定証明書を入手するためには、有視界計器飛行方式での民間機運航において時間計測に要求されるすべての項目を網羅したパイロットウォッチでなければなりません。Sinnのコレクションでは、EZM10.TESTAF、103.TI.TESTAF、103.TI.UTC.TESTAFおよび857.UTC.TESTAFが厳格なテスト基準に合格しTESTAF認定を受けました。

TESTAF
アーヘン応用科学大学のフランク・ヤンザー教授(左)と、ジン経営者ローター・シュミット
TESTAF
TESTAF科学顧問メンバー(左から右へ) : ヴォルフガング・ショーンフェルド氏(ジン), マーティン・ホッホ氏(サイエンス・コーディネーター), フランク・ヤンザー教授(アーヘン応用科学大学)、マルティナ・リヒター氏(Uhren誌), フォルカー・バウ氏(ユーロコプター社), ユルゲン・ヘンスィーク氏(アーヘン応用科学機構)

ジン社社長ローター・シュミットがこのプロジェクトへの取り組みを始めた2008年当時、ダイバーウォッチのDIN規格に相当するような標準規格がパイロットウォッチにはありませんでした。 ジンにはこれまで、定評のある技術開発機構と密接に協力してきた経緯があります。たとえばジンのダイバーウォッチは、この業界ではめずらしくゲルマニア・ロイド船級協会によって欧州ダイバー器具規格の認定を受けました。また過去には、ブランデンブルグ州クレットヴィッツにあるデクラ技術センターで、Sinnのさまざまなタイプの時計に対して耐G性能試験が行われました。 ダルムシュタット・フラウンホファ・インスティテュートでは、ジンの時計をいくつか選択して悪路をシミュレーションした環境での衝撃や振動が時計に与える影響を検証しました。これらのテストを受けたジンの時計はすべて過酷なテストに合格し、機能的に優れたものであることが証明されました。このように、ジンが提唱するその耐久性や信頼性は、実際に厳しい検証を重ねテストに合格することで裏付けられており、ユーザーは安心して使用することができます。 このようなテストを敢行することは、ジン社では特殊な任務遂行に必要とされる条件を備えた装備品として時計をデザインしていることの証しでもあります。

TESTAF - これまでにない新しい飛躍

プロ仕様のパイロットウォッチといえば、どんな特徴があるか。飛行における必要条件でどの項目を備えるべきか。どんな機能が必要不可欠か。このような問いに対して普遍的に有効な回答をするためにはパイロットウォッチ標準規格を制定することが必要でしたが、その当時はまだ存在していませんでした。2008年、ジンのオーナー兼最高責任者ローター・シュミットはアーヘン応用科学大学のフランク・ヤンザー教授と協力して、なんとかこの状況を改善したいと考えました。何年ものあいだこの分野の権威として君臨する宇宙航空学部が属するアーヘン応用科学大学機械工学部は、2012年大学ランキング1位に輝いています。長年にわたり航空機器の開発・試験に携わってきた経験をふまえて、この大学では航空工学の専門知識に加えて、深く科学的な知見に基づく実践的で堅実な研究の方向性を打ち出しています。この機械工学部は、ドイツ国内でも数少ない独自の飛行機を所有する学部のひとつであり、授業、飛行実習や研究に使われています。航空分野において、アーヘン応用科学大学はヨーロッパでも屈指の教育研究機関のひとつです。

時計分野での技術革新

アーヘンに拠点を置く宇宙工学部のエンジニアの協力を得て、時計業界では初めていくつかの技術的な必須条件が適用されました。たとえばTESTAFでは、時計の負圧耐性のテストを一回以上行わなくてはなりません。実際には、パイロットの手首にかかる圧力を再現するため、パイロットウォッチはテストにおける数千回の変化と同等の圧力サイクルを通過します。防水性に関しても飛行中は液圧および燃料、クリーニング液や解凍液への耐性も問題となります。さらに、パイロットウォッチの持つ磁場が緊急用コンパスなどの航空電子機器に影響を与えないことも重要な要素です。また、パイロットに眩しさを与えたり不用意に光を反射することも厳禁です。また耐衝撃振動性能を持っており、暗闇でも問題なく時間を計測できることが求められます。

明細事項

このプロジェクトの目的は、以下のようなカテゴリーで、飛行中に必要不可欠な時間計測条件を正確に記述した技術的かつ機能的要件を定義することでした。

Ⅰ 機能

  1. 有視界計器飛行方式に必要な機能
  2. 日中および夜間における視認性
  3. 安全な操作性
  4. 精度および駆動時間

Ⅱ 外部ストレス耐性

  1. 周期的な絶対周囲圧力の変化
  2. 有効な温度領域、急激な温度変化
  3. 耐衝撃性、重力加速度、振動
  4. 防水性、一般的な航空タービン燃料油
  5. 磁場の時計への影響

Ⅲ 安全性および適合性

  1. アビオニクスシステムにおける時計が磁場から受ける影響
  2. 光りの反射やグレアの防止対策
  3. フォーム
  4. ストラップの装着性
TESTAF
差圧テスト:めまぐるしく変化する周囲圧力に耐えるEZM10
TESTAF
EZM10を使った衝撃と振動に対するテスト
TESTAF
103.TI.ARのようなパイロットウォッチは、最大の振動に耐えることが必要です。
TESTAF
耐G性能試験中の103.TI.AR
TESTAF
パイロットウォッチの裏蓋のパッキンは、ジェット燃料に対する耐性も必要です。
TESTAF
EZM10のようなパイロットウォッチは緊急用コンパスに磁気の影響を与えない構造であることが条件

TESTAF認定は品質の証

パイロットウォッチとして必要不可欠な機能的および物理的要件に基づいて、中立的公共機関であるアーヘン応用科学大学は、すべての時計メーカーで応用できるTESTAFテストのための厳格な基準を設けました。テストに合格すると、そのパイロットウォッチがTESTAFテストにおいてすべての要件を満たしているという証明書が発行されます。TESTAF認定を受けた時計のダイヤルやケースには、水平線を模したコックピット画面中央に飛行機のシルエットが浮かぶデザインの登録済TESTAFロゴを使用することができます。ユーロコプター社では数週間にわたってチーフテストパイロットで公認技術者であるフォルカー・バウ氏(工学士)によるヘリコプターのプロトタイプテストを行い、理論的な研究結果をその中で検証し確認しました。TESTAFに関してはwww.testaf.orgから科学出版物がダウンロード可能です。TESTAFの開発においては、ジンもメンバーとなっている科学顧問委員会を立ち上げこの規格をさらに充実させるため監修しています。TESTAFは、将来的に行われるパイロットウォッチのテストに関して、専門誌編集者を対象とした科学的かつ機能的に裏付けされた審査体制も構築しています。

ポジティブな反応

TESTAF
2012年7月19日、ドナウヴェルトのユーロコプター社でフランク・ヤンザー教授によって行われたTESTAFの発表会

2012年7月19日、ジン、アーヘン応用科学大学およびユーロコプター社は、ドイツ、ドナウヴェルトのユーロコプター社本部でTESTAFの第1回目の発表を行いました。研究結果は、多くの時計メーカーや航空産業、専門誌の代表者たちに歓迎されました。

ジンで最初のTESTAF認定モデル

EZM10と103.TI.ARは、TESTAFの基準に最初にパスしたパイロットウォッチで、認定書が発行されています。

TESTAF
EZM10.TESTAF
TESTAF
103.TI.TESTAF