Columnコラム
類まれな文字盤を持つ
ジンの時計
計測機器としての実用性を徹底的に追求してきたドイツの時計ブランド、Sinn(ジン)。その哲学を反映するように、多くのモデルは視認性を最優先したブラックの文字盤を採用しています。しかし、ジンの魅力はそれだけにとどまりません。ブランドの技術力や実験精神が色濃く表れた、他にはない個性的な文字盤を持つ時計が、実は少数ながら存在します。時計の機能を視覚的に表現したもの、ブランドの歴史とアイデンティティを反映させた文字盤、時計そのものの在り方に挑戦するようなデザイン、あるいは特殊な加工を施したものなど――それらは実用時計の枠を超え、知的好奇心を刺激する存在です。このコラムでは、そんな”知る人ぞ知る”Sinn(ジン)のユニークな文字盤を持つ時計をいくつかご紹介いたします。
深海以上の潜水深度のイメージを
文字盤に込めたダイバーズウォッチ U15

Sinn(ジン)のメンズウォッチ「U15」は、Uシリーズ誕生20年を記念して、光が失われていく深海を想定した過酷な環境下でも確実に時間を刻む本格仕様の時計です。世界限定1,000本のこの時計は、500m防水というプロフェッショナル仕様の性能を備え、その信頼性は計測機器メーカーとしてのSinn(ジン)の哲学を雄弁に物語ります。ウォッチデザインのハイライトは、神秘的な深海を想起させるブルーの文字盤です。この時計の文字盤には静寂に包まれた深海から立ちのぼる泡をイメージした有機的なパターンが施され、機能一辺倒になりがちなダイバーズウォッチに詩的な表情を与えています。さらに時計ケース素材には、ドイツ海軍の退役した206型潜水艦U15の鋼鉄を再生採用。耐腐食性と高強度を誇るこの特別なスチールは、日常使いにも最適な実用性だけでなく物語性も兼ね備えています。極限環境に根差した性能と唯一無二の時計素材、そして印象的な文字盤が融合した時計U15は、専門性と他ブランドとの違いを実感できるSinn(ジン)ならではのダイバーズウォッチといえます。

文字盤の美しいパターンが特徴的な時計U15は、スイス製自動巻きムーブメントSW300-1を搭載し、駆動時間は約50時間です。この時計の逆回転防止機能付きダイバーベゼルは、セラミックと同等の高い耐傷性を誇るテギメント仕上げで、Sinn(ジン)独自の特殊結合方式で固定されているため、不意の衝撃でも外れる心配はありません。500mの防水性能は欧州潜水機器規格EN250/EN14143に基づき独立した検査機関であるDNVのテスト・認証を受け、減圧耐性も備えています。
文字盤に特別なパターンを持ち、太いホワイトのインデックスと針が個性的な印象を与えるこの時計U15は、カジュアルスタイルにはもちろん、落ち着いたブルーの色合いでビジネススタイルにもマッチするウォッチです。同じ文字盤デザインを採用するメンズダイバーズウォッチの同シリーズには、直径44mmのケースに1,000mの防水性能を持つ「U16」と、2,000mの防水性能を持つ「U18」もラインナップされています。どちらのモデルも第三者認証機関DNVにより防水性能、耐圧性能、機能性の認証を受けています。
レリーフ文字盤が美しい
クラシック時計1746.HEIMAT

「1746.HEIMAT」は、Sinn(ジン)の本社所在地フランクフルトへの敬意を込めて誕生した、クラシックな佇まいの中に確かな物語性を宿す時計です。最大の特徴は、文字盤一面に施された繊細なレリーフ加工の装飾。これはフランクフルト名物のアップルワインを飲む際に用いられる伝統的なグラス”Gerippte(ゲリップテ)”に見られるダイヤモンドパターンをモチーフとする文字盤です。このパターンは、光を反射させてワインを美しく見せる効果や、グリップ性を高めるために伝統的に使われてきましたが、フランクフルト独自の文化として「地域の伝統」を象徴するデザインとなっています。光の当たり方によって表情を変える時計文字盤の立体的な模様は、控えめでありながら豊かな奥行きを生み出し、シンプルなローマン数字の目盛りとともに時計に上質な気品と個性を与えます。過度な装飾を排しつつ、土地に根差した文化を静かに語る文字盤を備えたこのウォッチデザインは、実用時計メーカーとして知られるSinn(ジン)の意外な一面を映し出しています。フランクフルトの歴史と日常に寄り添う精神を、端正なクラシックウォッチとして結実させた美しい装飾文字盤を備えた一本です。

この時計の最大の特徴であるロジウム仕上げされた美しいレリーフ文字盤は、名だたる有名ブランドでも採用される電気鋳造プロセスによるもので、複雑な立体的表面構造を高い精度で実現することが可能です。ローマン数字の目盛りや針は、文字盤のレリーフと絶妙に調和しつつも鮮明なコントラストを生み出し、正確な時間の読み取りが可能です。このモデルの機能美は、カジュアルからフォーマルまであらゆるTPOで信頼性を発揮し、ビジネスシーンにおいてもメンズ・レディース問わず頼れるパートナーとなる腕時計です。
特徴的な文字盤のメンズクラシックウォッチ1746.HEIMATは、単なる時計としての機能性を超え、所有する喜びをもたらすアイテムです。そのレリーフ文字盤が生み出すシンプルな美しさと、実用性を兼ね備えたデザインは、次世代へと受け継ぐにふさわしい時計として、多くの人におすすめできます。
他に類を見ない
8つのロゴマークを備えた時計556.F-4.II

「556.F-4.II」は、航空史に名を刻むF-4ファントムII戦闘機の退役を称え、日本限定で製作されたメンズパイロットウォッチの第2弾で、時計コレクターにおすすめの200本の限定モデルです。端正で視認性の高い556シリーズをベースに、最大の特徴はその文字盤。F-4を装備した航空自衛隊8つの飛行隊の部隊マークが、文字盤のインデックスに沿うように配され、力強く存在感を放ちます。文字盤にブランドロゴ以外のマークを配した時計は少なくありませんが、8つもの公式部隊マークを同時に収めた文字盤は極めて稀で、この時計ならではの個性と希少性を際立たせています。時計には部隊マーク以外にも随所にファントムのエレメントがちりばめられています。計測機器としての質実剛健さと、日本の航空史への敬意が見事に融合した腕時計です。

写真手前のファントム戦闘機436号機は、556.F-4.IIの時計のデザインベースとなった特別塗装機です。このファントムは、F-4を装備した8個飛行隊のうち、初のF-4ファントム装備部隊である第301飛行隊が2020年12月にラストフライトを行った特別機で、機体左側のインテイクベーン(写真では日の丸の左側の部分)には、556.F-4.IIの文字盤のヒントとなったF-4を運用した8つの部隊マークが一堂に並んでいます。556.F-4.IIの文字盤のブルーはこの機体のパイロットブルーのアクセントカラーを、赤い秒針は日の丸や赤いラインをイメージしています。
他に類を見ない8つの独特な部隊マークを文字盤に配置することでその存在感を際立たせている556.F-4.IIは、視覚的なインパクトだけでなくステンレススチール製の時計ケースにスイス製自動巻きムーメントを搭載し、20気圧の防水性能と減圧耐性も備えた信頼性の高いパフォーマンスを提供しています。時計愛好家はもちろん、航空ファンにとってはただの時計というだけでなくコレクタブルなアイテムとして、幅広く多くの方に愛される個性と歴史を兼ね備えた時計です。
傷だらけの文字盤を備えた
パイロット時計358.SA.FLIEGER.DS

「358.SA.FLIEGER.DS」は、Sinn(ジン)の機能主義に遊び心を加えた異色のパイロットウォッチです。この時計の最大の特徴は、その傷だらけの文字盤にあります。通常、腕時計は美しさを保つために傷を避ける工夫が施されますが、このモデルの文字盤はあえてその逆を行くことで、他にはない個性的な魅力を放っています。傷というのは一般的には避けるべきものとされていますが、この時計はそれを意匠として文字盤に再現し、精悍さの中に独特の表情を生み出しています。

パイロットにとって瞬時に時間を読み取ることができる視認性の高い時計の文字盤は不可欠な要素です。この時計の文字盤は、ベースカラーを着色したあとブラシなどの金属工具を使用して熟練職人が一点一点手作業でスクラッチ加工を施します。スクラッチ加工後に文字盤には透明なマットラッカーを塗装し、最後にアラビア数字のインデックスやロゴマーク、その他の文字のプリントを行います。マットラッカー処理により、文字盤は不規則なパターンを持つスクラッチ柄ながらインデックスの目盛りのプリントが際立ち、Sinn(ジン)が時計製作において重要視している高い視認性を確保できます。クロノグラフとしての高い視認性や堅牢性はそのままに、限定ではないレギュラー商品でありながら、文字盤には一点物のような個性を楽しめる点が魅力です。実用時計の枠を超え、道具としての美学を感じさせる一本です。
この時計はその文字盤の繊細な装飾により、メンズウォッチとしてのみならずレディースウォッチとしてもおすすめでき、様々なTPOに対応できるクロノグラフです。文字盤が多面的な光を反射し、身に着ける人は光の加減や明暗の状態で時計の異なる表情が楽しめます。文字盤に静謐な美しさをたたえたパイロットウォッチです。
Sinn(ジン)のコレクションの中にはこのモデル以外にも、U50.DS、T50.GOLDBRONZEをはじめスクラッチ加工を施した文字盤を備えた時計が何種類か存在します。それらは限定モデルで高い人気を獲得しています。
Sinn(ジン)が掲げる質実剛健という哲学は、必ずしも無骨さだけを意味するものではありません。視認性と実用性を核としながらも、背景にある物語や想いを文字盤に映し出す――それこそがSinn(ジン)の奥深い魅力であり、機能美の先にある”語れる時計”として、確かな価値を放ち続けます。計測機器以上の存在であるユニークな文字盤を備えたSinn(ジン)の腕時計は、デザインや素材の選び方においても他に類を見ない個性を持ち、所有者の知的好奇心を掻き立てます。