Columnコラム

似て非なるジンの時計共通デザインに宿る時計づくりの哲学

Sinn(ジン)の腕時計を見ていると、どこかよく似た外観を持つモデルの存在に気づきます。Sinn(ジン)では文字盤のレイアウトや針の形状、無駄を削ぎ落したケースデザインは共通する部分が多く、一見すると同じ時計のバリエーションのようにも見えるかもしれません。しかし、似ているように見えるSinn(ジン)の時計も、その内部はそれぞれ異なる役割を担っていることが分かります。このコラムでは、いくつかのモデルを例に挙げながら、外観の共通性の背後にある仕様の違いと、そこに込められたコックピットクロックの製作で培ったSinn(ジン)の時計づくりの考え方を見ていきます。

Sinn(ジン)の時計

ジンの時計に見る
「共通デザイン」という考え方

Sinn(ジン)の時計に見られる外観の共通性は、単なるデザイン上の統一ではありません。そこには、コックピットクロック同様の視認性や操作性といった実用性を重視するSinn(ジン)の時計づくりに対する哲学を反映しています。時計に求められる基本的な機能を確実にするため、Sinn(ジン)では文字盤の構成や針の形状、インデックスの配置などをブランドの長い歴史の中で磨き上げてきました。その結果、Sinn(ジン)の多くの時計は共通するスタイルを持つようになっています。

Uシリーズ

しかし、同じデザインを基盤としながらも、Sinn(ジン)の時計は用途に応じて仕様が細かく分けられています。ケースサイズや素材、搭載するジン・テクノロジー、さらには機能構成まで、Sinn(ジン)はそれぞれのモデルを想定される使用環境に合わせて設計しています。つまり、外観の共通性はSinn(ジン)のコレクションを貫く”設計の言語”のようなものであり、その上に異なる役割を持つ時計を展開しているのです。こうした視点から見ると、Sinn(ジン)の中でよく似たデザインを持つ時計の違いも、より明確に理解できるようになります。

似て非なる時計の具体例ベーシック3針の設計差

ここからは、外観がよく似ていながら仕様が異なるSinn(ジン)の腕時計を、いくつかの具体例で見ていきます。以下では、比較したモデルの仕様について相違点をピックアップしています。

たとえば4つのアラビア数字を備えた文字盤を持つ「556.A」と「856.B」は、一見するとよく似た魅力的な時計です。いずれも高い視認性を備えたSinn(ジン)で人気のレイアウトですが、その設計思想は異なります。ステンレススチール(SS)製のケース径38.5mmの556.Aは、ジン・テクノロジーをあえて搭載せず、日常的な使いやすさを重視したシンプルな時計です。一方、ケース径40mmの856.Bはミリタリーパイロットの使用を想定し、1,000mT(80,000A/m)の高耐磁性能やセラミックと同等の耐傷性を持つテギメント加工、さらに風防の曇りを防ぎ精度を安定させるArドライテクノロジーといったSinn(ジン)独自のテクノロジーを備えたプロフェッショナル仕様の時計です。

  • 556.A

    ベーシックな
    機械式時計の
    機能美を体現する
    モデル

    556.A
    • SS 316L
    • 直径38.5×厚さ11mm
    • ヘアライン仕上げ
    • 耐磁性能:4,800A/m
    • 裏面:サファイアクリスタル
    • Arドライテクノロジーなし
  • 856.B

    過酷な環境に
    対応する
    高機能
    パイロットウォッチ

    856.B
    • SS 904L(テギメント※)
    • 直径40×厚さ11mm
    • ビーズブラスト仕上げ
    • 耐磁性能:80,000A/m
    • 裏面:ステンレススチール
    • Arドライテクノロジー搭載

556.Aの詳細はこちら

856.Bの詳細はこちら

さらに、「104.ST.SA」と「105.ST.SA」は機能構成や搭載するムーブメントこそ同じでありながら、デザインの方向性によって個性を分けた例です。104は回転ベゼルと力強い針を備え、Sinn(ジン)で人気の伝統的なパイロットウォッチのスタイルを明確に示した時計です。一方 105は、丸みを帯びたバーインデックスや針、独特の配置を持つデイデイト表示など、Sinn(ジン)のコレクションの中でもデザイン性を強く意識した腕時計で、多機能ベゼルを利用して第二時間帯を読み取ることが可能です。なお、105シリーズではUTC機能を搭載したモデルでレッド・ドット・デザイン賞およびiFデザイン賞を受賞しており、そのデザイン性の高さが国際的にも評価されています。

  • 104.ST.SA

    ジンの伝統を受け継ぐ
    クラシック
    パイロットウォッチ

    104.ST.SA
    • SS 316L
    • 直径41×厚さ11.9mm
    • ポリッシュ仕上げ
    • 特殊結合方式のカウントダウン式
      パイロットベゼル
  • 105.ST.SA

    多機能ベゼルを備えた
    デザイン性の高い
    スポーツモデル

    105.ST.SA
    • SS 316L
    • 直径41×厚さ11.9mm
    • ビーズブラスト仕上げ
    • 特殊結合方式のカウントアップ式
      多機能ベゼル(テギメント※)

104.SA.SAの詳細はこちら

105.ST.SAの詳細はこちら

そして、Sinn(ジン)を代表するダイバーズウォッチのU1とU50も、外観と機能がほぼ共通でありながら、サイズによって選択肢を用意した時計です。ドイツ潜水艦用の特殊鋼Uボート・スチールを採用した高い耐久性を持つ時計ケースの基本設計は同じですが、ケース径44mmで1,000mの防水性能のU1に対し、U50は41mmで500m防水とコンパクトに設計しています。腕元で強い存在感を求めるならU1、装着感を重視するならU50というように、同じ設計の時計でもサイズによって使い方の幅が広がります。どちらのダイバーズウォッチもその防水性能は国際的な第三者機関のDNVに認証されています。

  • U1

    潜水艦用特殊鋼製の
    高耐久
    ダイバーズウォッチ

    U1
    • Uボート・スチール
    • 直径44×厚さ14.7mm
    • 100気圧防水
  • U50

    U1の機能を継承した
    コンパクト
    ダイバーズウォッチ

    U50
    • Uボート・スチール
    • 直径41×厚さ11.2mm
    • 50気圧防水

U1の詳細はこちら

U50の詳細はこちら

※テギメント:素材の表面をセラミックと同等の硬度に高める仕上げ

ミッションタイマーEZMの
機能分化

Sinn(ジン)の時計コレクションの中でも、より明確に用途を想定して設計している人気のシリーズがミッションタイマーEZMです。EZMは「Einsatzzeitmesser(出撃用計測機器)」の略称で、特定の任務や環境で使用することを前提に開発した腕時計です。そのため、同じEZMシリーズの腕時計でも、想定されるミッションに応じて機能や仕様を選択しています。

その一例が、Sinn(ジン)の代表作として知られるプロフェッショナル仕様の「EZM3」と「EZM3.F」です。両モデルは基本となるデザインを共有し、どちらも1,000mT(80,000A/m)の高い耐磁性能や特殊オイルを使ったジン・テクノロジーなどを備えていますが、細部の仕様には明確な違いがあります。EZM3はプロフェッショナルダイバーの使用を想定した腕時計として、高い防水性能と優れた視認性を備えたSinn(ジン)らしい実用的な設計が特徴で、その防水性能は第三者機関DNVの認証を受けています。これに対して、EZM3.Fはパイロットのために開発された腕時計で、EZM3の基本構造を踏襲しながらも、文字盤デザインや外観のディテールが異なるモデルです。モデル名の「F」は、「FLIEGER(パイロット)」を意味しています。

  • EZM3

    ダイバーの使用を
    想定した信頼性の高い
    ミッションタイマー

    EZM3
    • SS 316L
    • 直径41×厚さ12.3mm
    • カウントアップ式ダイバーベゼル
    • 瞬時に時刻を読み取るための
      アラビア数字のインデックス
    • ダイビングに不要な
      日付機能は赤色で表示
    • 50気圧防水(船級機関DNV認証済み)
  • EZM3.F

    パイロットのために
    開発した
    ミッションタイマー

    EZM3.F
    • SS 316L
    • 直径41×厚さ11.7mm
    • カウントダウン式パイロットベゼル
    • バーインデックスのみの
      シンプルな文字盤デザイン
    • 日付機能は通常の白で表示
    • 20気圧防水

EZM3の詳細はこちら

EZM3.Fの詳細はこちら

このようにSinn(ジン)のEZM3シリーズでは、共通する基本設計を基にしながらも、用途やコンセプトに応じて仕様を選択しています。ミッションタイマーとしての機能性を軸にしながら、それぞれの時計に異なる役割を与えている点に、Sinn(ジン)の時計づくりの特徴を見ることができます。

クロノグラフのバリエーション

Sinn(ジン)の時計の中で、特に多彩なバリエーションを持つのがクロノグラフです。外観が似ている時計であっても、ケースサイズや構造、搭載しているジン・テクノロジーの違いによって、それぞれ異なる個性を持つよう設計しています。

たとえば103.B.AUTOと103.B.SA.AUTOは、いずれもSinn(ジン)を代表するパイロットクロノグラフに属する腕時計です。Sinn(ジン)の昔から変わらぬ文字盤デザインをはじめ、基本となるスタイルや機能は共通していますが、ケース構造や細部の仕様に違いがあり、それぞれのモデルに独自の特徴を与えています。

  • 103.B.AUTO

    伝統的デザインの
    パイロット
    クロノグラフ

    103.B.AUTO
    • SS 316L
    • 直径41×厚さ15.5mm
    • アルミニウム製カウントアップ式
      パイロットベゼル
    • 標準タイプのプッシュボタン
    • 強化アクリル風防
    • Arドライテクノロジーなし
  • 103.B.SA.AUTO

    耐久性を高めた
    高機能パイロット
    クロノグラフ

    103.B.SA.AUTO
    • SS 316L
    • 直径41×厚さ17mm
    • 特殊結合方式のカウントダウン式
      パイロットベゼル
    • ねじ込み式プッシュボタン
    • 両面無反射加工のサファイアクリスタル
    • Arドライテクノロジー搭載

103.B.AUTOの詳細はこちら

103.B.SA.AUTOの詳細はこちら

また、クロノグラフの中にはサイズによってバリエーションを展開している例もあります。356.FLIEGER、356.SA.FLIEGER、358.SA.FLIEGERは、いずれもSinn(ジン)のパイロットクロノグラフとして共通するデザインを持ちながら、ケースサイズや仕様の違いによって装着感が異なります。コンパクトなサイズで扱いやすい腕時計から、より存在感のあるサイズの腕時計まで、用途や好みに応じて選択できるようになっています。

  • 356.FLIEGER

    コンパクトサイズの
    クラシック
    パイロットウォッチ

    356.FLIEGER
    • SS 316L
    • 直径38.5×厚さ15.9mm
    • ビーズブラスト仕上げ
    • 強化アクリル風防
  • 356.SA.FLIEGER

    コンパクトサイズに
    サファイアクリスタルを
    採用

    356.SA.FLIEGER
    • SS 316L
    • 直径38.5×厚さ15mm
    • サテン仕上げ
    • 両面無反射加工の
      サファイアクリスタル
  • 358.SA.FLIEGER

    大型ケースで
    存在感を高めた
    パイロットクロノグラフ

    358.SA.FLIEGER
    • SS 316L
    • 直径42×厚さ15mm
    • サテン仕上げ
    • 両面無反射加工の
      サファイアクリスタル

※右にスクロールできます

356.FLIEGERの詳細はこちら

356.SA.FLIEGERの詳細はこちら

358.SA.FLIEGERの詳細はこちら

このようにクロノグラフにおいても、Sinn(ジン)の時計は単にデザインを変えるのではなく、サイズや構造、仕様の違いによってコレクションの幅を広げています。共通のデザインを基盤としながら、多様な機能や使用感を展開している点に、Sinn(ジン)の時計づくりの考え方が表れています。

共通デザインのもとで
機能を展開するジンの哲学

Sinn(ジン)の時計づくりは、無駄を省いたデザインと用途に応じた機能やテクノロジーの選択という明確な時計製作の哲学が存在します。これにより、Sinn(ジン)の時計はライフスタイルや目的に合った時計が選びやすくなっています。これが、Sinn(ジン)の時計が長年愛され続ける理由のひとつです。

視認性や操作性を重視したデザインを共通の”設計言語”として用い、そのうえで用途に応じた機能や技術を組み合わせていく――それがSinn(ジン)の時計づくりの特徴です。実際にSinn(ジン)の時計を手に取って見てみると、外観の共通性の背後にある時計づくりに対する哲学と、機能を起点にコレクションを展開するブランドの姿勢が、よりはっきりと見えてくることでしょう。