Columnコラム
#01Arドライテクノロジーの後付け
Arドライテクノロジーは、Sinn(ジン)が開発した腕時計の除湿機構で、時計内部を限りなく無水に保つことで、極端な環境下でも精度の安定と風防の曇りを防止するジン・テクノロジーのひとつです。この技術は、ドライカプセル、EDRパッキン、プロテクトガスという3つの要素で完成します。Sinn(ジン)の時計製作において、その耐久性の高さを担うこのArドライテクノロジーが、後付けできるのをご存じでしたでしょうか。特定のモデルに限られますが、購入時にArドライテクノロジーを搭載していなかったモデルでも、随時、ドライカプセルを取り付けて、プロテクトガスの充填が可能です。これができるシリーズは、103、303の各シリーズのサファイアクリスタル製風防搭載モデルと144、203シリーズのうち時計ケースのドライカプセル部分にネジが埋め込まれている個体です。103.B.SA.AUTOなどは人気のモデルですが、2018年6月以前の個体ではArドライテクノロジーは標準装備されていませんでした。Sinn(ジン)ならではのテクノロジーを体感したいという方には最適です。
ドライカプセルには緑色のEDRパッキンを使用しています。
税込価格は下記の通りです(※)。
ドライカプセル代:11,000円
プロテクトガス入れ:5,500円
ドライカプセル搭載にはパーシャルリペア技術料がかかります。
パーシャルリペア技術料:保証書あり=9,900円、保証書なし=19,800円、防水テストはなし
オーバーホールの際に一緒にご依頼いただいた場合、パーシャルリペア技術料は発生しませんので、ご検討中の方はオーバーホールのタイミングで実施されるのがおすすめです。
尚、一度、Arドライテクノロジーを搭載すれば、次のオーバーホールの際にはドライカプセルの交換とプロテクトガスの充填はオーバーホール料金内で自動的に行われます。
※価格は2025年8月現在のものです。
#02時計に傷が付かない
テギメント・テクノロジー
時計は長く使用するほどに日常の中で小さな傷がついてしまうことが避けられません。しかし、テギメント・テクノロジーはこの問題に革新的な解決策を提供します。この技術は、時計のケースやブレスレットに特殊な加工を施し傷が付かないようにする技術で、2003年に初めてSinn(ジン)の時計に採用されたジン・テクノロジーです。時計のケースやブレスレットに使用する鋼材に特殊な処理を施すことで鋼材の表面に炭素分子を拡散・浸透させ、焼き入れと焼き戻しを行い浸炭層を硬化させることでハイレベルの耐傷性と耐摩耗性能が備わります。Sinn(ジン)ではテギメント・テクノロジーを施すステンレスは高級ステンレスと言われている堅牢性の高い904Lを採用し、さらに220ビッカースの表面硬度をセラミックと同等の1,200ビッカースまで引き上げます。またベースとなる鋼材の非浸炭層は硬化せず、鋼材本来の靭性は損なわれることはありません。現在、Sinn(ジン)ではこのテギメント・テクノロジーを904LステンレスやUボート・スチール、チタンで採用し加工を行っています。
通常のステンレススチール製ケース。ステンレススチールの工具で簡単に傷が付いてしまいます。
テギメント加工を施したケース。傷が付いているように見えるのは、硬度約200HVのステンレススチール製工具の方が削れた削り屑です。
本来工業製品の車軸や歯車など高い負担がかかる精密部品などで使用されることが多いこの技術が時計に施されることで、細かい摩耗を防ぐだけでなく、時計の価値を長く保つという点においても優れた効果を発揮します。テギメント・テクノロジーは時計表面の風合いも維持するため、何年使用しても新品の時と変わらぬ使い心地を楽しむことができます。
#03低温から高温までの動作保証
- ジン特殊オイル66-228
機械式時計のムーブメントパーツがストレスなく円滑な動作を行うために使用されている潤滑オイルは、使用される時計の温度環境によって潤滑の効果が左右されます。一般的な潤滑オイルでは温度が上がるにつれ、オイルが作る油膜の粘度は低下します。温度が下がった場合は通常-25℃で粘性が高くなりオイルが硬化し、パーツが正確に動作するのに必要なトルクが増大するため時計の動作を維持できなくなります。しかしながら、ジン社開発の特殊オイル66-228は-66℃まで粘性を維持し+228℃まで蒸発が起きません。このオイルの使用により急激な温度変化に耐え、-45℃から+80℃の温度範囲でDIN(ドイツ工業規格)の定めた刻時精度の維持を可能にしました。
通常であれば時計が止まってしまう-45℃の温度域でも時計は稼働し続けます。実際には-45℃を下回る温度域においても駆動を続けることが出来ますが、この極低温環境では時計は止まることはなくとも本来の精度を維持することが出来なくなります。
ジン・テクノロジーのひとつであるこのオイルが使用されているモデルは、ドイツ出荷の際に全品-45℃と+80℃での検品が行われています。これはムーブメントパーツに使われている金属の膨張や収縮による隣り合う歯車等のパーツ相互の関係性による影響を時計に組み込まれた状態で試験を繰り返し、完璧に機能することを確認することに他なりません。
下段:テストプログラムモード
ジン・テクノロジーは、時計の耐久性や信頼性を高めるために開発された一連の技術です。Arドライテクノロジーは湿気から時計を守り、テギメント・テクノロジーは傷つきにくい表面を実現します。また、特殊オイル66-228によって極端な温度変化にも対応可能です。このようにして、Sinn(ジン)は単なる時間を示す道具以上のものを提供し、プロフェッショナルの信頼を勝ち取っています。さらに、これらの技術は、時計を長く使いたい、どんな環境でも安心して使用したいという方に最適です。これらのジン・テクノロジーを搭載した時計を選ぶことで、その技術力と実用性を実感し、日常生活や冒険においても信頼できるパートナーを手に入れることができます。興味を持たれた方は、ぜひ次のステップとしてSinn(ジン)の正規販売店にて時計を実際に手に取ってみてください。きっと新しい価値の発見があることでしょう。
