ジン・テクノロジーを徹底解剖#01Arドライテクノロジーとテギメント
ジンの時計作りの哲学は視認性、機能性を最重要視し 身に着ける人が生涯信頼できる 極限状態でも最高の精度を発揮する時計を作ることです。
さらに1994年に工学士であるローター・シュミットがオーナーになって以来 それまで時計業界にはなかった数々のテクノロジーが誕生し 各モデルの用途に合わせてそれらを搭載しています。
すでにジンを良く知る方にとっては周知のことかもしれませんが ここではより詳細にジン・テクノロジーをご紹介いたします。 連載の第一回目はArドライテクノロジーとテギメントです。
Arドライテクノロジー
この技術の目的は、機械式時計のムーブメントバーツに使用されているオイルの劣化を防ぎ、時計の精度を安定させることです。オイルの劣化は時計内部に含まれている湿気や、時間の経過とともに時計内に拡散する湿気によって引き起こされます。水は常に気体の状態で大気中に存在しており、気体として時計ケースの機密構造をかいくぐります。気温の変化によりこれが微細な結露を引き起こし、水分が液体の状態で内部に溜まるのです。ジンのエンジニアは、以下の3つの要素によるArドライテクノロジーを開発し、この問題を解決しました。
1. ドライカプセル
2. プロテクトガス
潤滑オイルの劣化が引き起こす放電腐食を防ぐため、時計のケース内に希ガスと呼ばれる安定したプロテクトガスを充墳することにより、静電気や不安定ガスを含む空気を可能な限り排除し放電腐食を防ぎます。
3. EDRパッキン
時計ケースに気体が侵入し、大気中の水分がケース内部に留まるのを最小限に抑えるため、Arドライテクノロジー搭載の時計にはEDR(超拡散削減)パッキンを使用しています。ニトリルゴム(NBR)を使用した従来のケース用パッキンと比べ、ケース内への水分浸透を最大で25%削減することができます。
Arドライテクノロジーはオイル劣化の問題を解決するだけでなく、急激な気温の変化による風防の曇りも防止され、どのような環境でも時計の読み取りを可能にします。Arドライテクノロジーを搭載した時計は3年間の保証付きです。
テギメント・テクノロジー
この技術は窒素を使用した浸炭加工を時計のケースに施すことにより、鋼材の表面に炭素分子を拡散・浸透させ、焼入れして硬化させます。2003年に初めてモデル756に採用し、国際時計宝飾見本市のバーゼルワールドで発表しました。当初はステンレススチールのみに採用していましたが、2005年からはドイツの潜水艦の鋼材Uボート・スチールにも採用し、2011年に発表したEZM10からはチタンにも加工が可能になりました。
ジンではこのテギメント加工を施しているステンレススチール製ケースには、腐食、錆、酸に強く、堅牢性が高いと言われる904Lを採用しています。素材の表面をセラミックスと同じ1200ビッカーズ以上の硬度にして時計に傷がつくのを防ぎます。今回のメルマガでは、ケースへのデモンストレーションビデオをご覧いただきます。
テギメント・テクノロジーはどこから思いついたのでしょうか。実は工学士であるジンのオーナー、ローター・シュミットが、食品の缶詰を作る工程から発想を得たのだそうです。缶に傷が付いていると食品がそこから腐食してしまうので、耐傷性を高めるため食品の製缶時にも焼入れという技術が採用されているのだそうです。工学士ならではの思いつきです。
2回目以降はハイドロや回転ベゼルの特殊結合方式、ジン特殊オイルなど、 不定期の連載でご紹介してまいります。
ジンの正規店では技術者が実験を交えながらこのジン・テクノロジーをご紹介する テクニカルセミナーを開催する機会がございます。 コロナ感染予防対策について十分に配慮してまいりますので、 お近くの正規店での開催の際には是非、足をお運びください。
公式サイト内ジン・テクノロジーの解説ページはこちら
以下のページでは、それぞれのテクノロジーを搭載したモデルの一覧がご覧いただけます。
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