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ジン・テクノロジーを徹底解剖#02ハイドロとマグネチック・フィールド・プロテクション

1994年以来、現社長の工学修士であるローター・シュミットの指揮のもとジンのウォッチメーカー、デザイナー、エンジニアのチームは 技術革新や新たな製造方法に常に注力し、ジン独自のテクノロジーを開発してきました。

異分野の技術を採り入れたそれらの技術は 時計業界の中では過去に例のないちょっと変わったものばかりです。

すでに皆さんがよくご存じのことも多いと思いますが、このメールマガジンでは、これを不定期であらためてご紹介しています。 シリーズの第二回目は、ハイドロとマグネチック・フィールド・プロテクションです。

ハイドロ

 ハイドロは、1996年に誕生し最初に403.HYDRO(EZM2)に搭載されました。時計ケースに特殊なオイルを封入することにより、時計ケース内部の収縮率を海水や淡水とほぼ同じにする技術です。これにより、ジンではごつごつした分厚いケースなしに、5,000mという高い防水性を実現しています。ジンの時計ではUXシリーズに搭載される技術です。
 ハイドロを搭載した時計には3つのメリットがあります。人が潜ることができる深さであればどんな圧力にも耐えられること、水中でどの角度から見ても完璧な読み取りができること、曇りが全くないことです。

 の写真はオイルを充填中のUX.GSG9です。オイルはケースの12時位置にある充填孔から入れられ、ネジとパッキンで蓋をします。この写真は1点のみを特別に充填する装置により行われていますが、実際にはまとめてこの充填を行う大きな装置があります。

特性1. あらゆる潜水深度での耐圧性

 充填されている液体はほとんど圧縮されません。可動式の裏蓋により、時計の内圧は外圧に合わせて常に調整されています。時計の内部圧力(1気圧)と外部水圧(水深10mにつき1気圧上昇)の間に生じる圧力負荷は、ハイドロを搭載した時計では発生しないのです。ハイドロ用のケースは船級・認証機関DNV GLにより12,000mまでの耐圧テストをクリアしており、ムーブメントを搭載した時計の状態では5,000mまでのテストをクリアしています。

特性2. 水中でも反射しない

 従来のダイバーズウォッチのクリスタルは、ミラーリング効果により水中ではどうしても光を反射してしまいますが、ハイドロを搭載した時計は違います。ケース内の空間の空気をサファイアクリスタルと同じ光学特性を持つ特殊なオイルに置き換えることでミラーリング効果を中和し、斜めからでも時計の文字盤を読むことができるようになります。

 写真の中央がハイドロを搭載したUXです。他のダイバーズウォッチと比較すると、ハイドロテクノロジーのおかげで、水中でも反射せずに見ることができるのはジンのUXだけです。

 以下の動画では水中での変化の様子をご覧いただけます。上の時計がオイルの入ったハイドロのUXで、下はオイルを入れていない時計です。

特性3. サファイアクリスタルが曇らない

 ハイドロの時計はケース内に空気が存在しないため、サファイアクリスタルが曇ることがありません。曇りは水分を含んだ空気中でのみ発生します。空気中に湿気がなければ、極端な気温差の環境下で結露することはありません。

 このようなメリットを持つハイドロの時計ですが、製作や修理には非常に高い技術を必要とし、ドイツのジン社内でも特別な技術者のみしか行うことができません。従って、電池交換などを含む修理に関しても日本国内では行うことができずすべてドイツに送られるため、メンテナンスには時間がかかります。

マグネチック・フィールド・プロテクション

 マグネチック・フィールド・プロテクションは時計を防磁する技術で、1994年に最初にモデル244に搭載されました。電気モーター、スピーカー、マグネット式ロックなどから発生する磁界によって、時計の心臓部であるニヴァロックス社製ヒゲゼンマイが磁気を帯びると時計の精度に悪影響を与える原因になります。そこでジンが開発したのが80,000A/m(100ミリテスラまたは1,000ガウス)という高い防磁性能を実現したこの技術です

 軟磁性材料を使用したインナーケースにムーブメントホルダー、裏蓋を組み込み、さらに文字盤にもこの素材を使用し磁化を防ぎます。これによりDIN規格(ドイツ工業規格)で定められた防磁時計のための4,800A/mという数値をはるかに上回り、磁気干渉を最小に抑えます。ちなみに日本のJIS規格では第一種耐磁時計は4,800A/m、第二種耐磁時計が16,000A/mと規定されていますので、これらもクリアする数値です。

 この技術を採用したジンの時計のダイヤルにはそれを示すマーク(の写真の「18」のインデックスの右側の黒いマーク)が入っています。これは、磁力線と磁気コアをデザインしたものです。中にはダイヤルのマークではなく裏蓋に「80,000A/m」という文字が刻印されているモデルもあります(EZM3EZM13など)。

 ドイツのジン本社のカスタマーサービス部門が約1000個の時計を調査したところ、受け取った時計の60%近くが磁気を帯びており、そのうちの半数(30%)には磁場に起因する深刻な欠陥があったそうです。時計の着用者が磁場の発生源との接触を意識していない場合でも、その影響が見られたそうです。

 デジタル社会では私たちを取り巻く環境には多くの磁気が発生していますので、この技術は特殊時計だけに対するものでなく、一般的にもとても有効な技術と言えます。

ジンがこれらの技術を独自に開発する目的はただ一つ 技術の力を借り、丈夫で使いやすく、機能性に富んだ時計を作ることです。 それこそが、ジンの時計がパイロットやダイバー、 GSG9(ドイツ連邦警察局特殊部隊)などの特殊部隊に愛用されている理由なのです。

公式サイト内ジン・テクノロジーの解説ページはこちら

以下のページでは、それぞれのテクノロジーを搭載したモデルの一覧がご覧いただけます。
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