TITANIUMジンが採用しているチタンについて
1961年から続く60年以上にわたるブランドの歴史の中で、ジンは時計の素材として様々な金属を採用してきました。現行モデルにおいてジンが採用している金属には一般的なステンレススチール、2005年からダイバーズウォッチに使用しているドイツ潜水艦用の鋼鉄Uボート・スチール、ローズゴールドやシルバーといった貴金属がありますが、今回のメールマガジンでは、いくつかのモデルに採用しているチタンについてご紹介いたします。
チタンの発見は18世紀で、金属材料として実用化されたのは1946年と言われています。工業製品としてのチタンは、比較的新しい金属です。現在、チタンは航空宇宙開発から電気設備、自動車、医療など幅広い分野で使われており、様々な用途での可能性を秘めている素材です。チタンと一口に言っても合金を含めると様々な種類があります。ジンでは“ピュアチタン(純チタン)”と呼ばれるグレード2と高強度チタン合金であるグレード5のチタンのみを使用しています。グレード5のチタン「Ti-6Al-4V」は、アルミニウム6%、バナジウム4%を含む金属で、日本では「64チタン(ロクヨンチタン)」と呼ばれています。これらは腕時計には理想的な素材で、ジンは現行モデルでは以下のものにチタンを採用しています。
ケースにグレード2のチタンを採用しているモデル
103.TI.ARにグレード2を採用しているのは歴史的な理由からです。1980年代から1990年代にかけて、ジンは103の時計のケースに「純チタン」を使用し始めました。後にグレード5の高強度チタン合金が持つ利点を発見しましたが、’80年代から続く103の伝統を引き継ぎ、このシリーズのチタンにはグレード2を採用しています。
ケースにグレード5のチタンを採用しているモデル
腕時計をデザインする際には、さまざまな要件に配慮しています。チタンのグレード5は非常に硬く、耐食性があるため、耐圧ケースをより薄く作ることが可能です。同じ圧縮強度を得るには、グレード2の場合だとケースと裏蓋を厚くしガラスリングを強化する必要があるため、ジンではダイバーズウォッチにはグレード5を採用しているのです。
日本ではレギュラーモデルではありませんが、レディース角型の243シリーズのチタンもグレード5です。グレード5は研磨が可能でありグレード2は研磨ができないため、ポリッシュ仕上げを施す243シリーズではグレード5を採用しています。
ちなみに、時計ケースがグレード5チタンであっても、ブレスレットやベルトのバックルはすべてグレード2を採用しています。何故なら、以下の特徴でもご紹介いたしますが、グレード5は非常に硬いためプレス加工ができないからです。
以下では、チタンの特性についてまとめてみました。
#01 軽い
チタンの特徴として一番に知られているのはその圧倒的な“軽さ”です。具体的な数値で表すとステンレススチールの比重が7.9であるのに対し、純チタンは4.51、チタン合金は4.8で、ステンレススチールの重量の約60%です。銅と比べると半分程度の軽さで、製品の軽量化による低燃費化が重要な航空分野では、需要が拡大しているそうです。
#02 強度が高い
チタンの強度はグレード2で340~510 n/mm2(=MPa)、グレード5で約900 n/mm2(=MPa)で、鉄やアルミに比べ2倍以上の強度を誇ります。ちなみにステンレススチールは700 n/mm2(=MPa)です。メリットである反面、強度が高いがゆえに加工の難易度も高く価格が高めになりますが、それを持って余りある利点があると言えるのがチタンです。
#03 サビにくい
チタンは塩水にとても強い耐性があり、一般的な金属にとって腐食しやすい海水などの過酷な環境下でもサビにくいため、橋の脚などにも使われています。腕時計としてはダイバーズウォッチに最適な素材と言えます。
#04 金属アレルギーを起こしにくい
金属アレルギーは、汗などの水分と金属が反応して発生するイオンが原因で起こります。チタンは空気に触れると酸化被膜を作り、アレルギーの原因となるイオンの発生がとても少ないため、金属アレルギーが起こりにくいのです。それゆえに、腕時計や眼鏡など肌に直接着けるものや医療用の器具に適しており、これも他の金属と大きく異なるチタンの特性のひとつです。
#05 熱伝導率が低い
寒い季節にチタンの時計を身に着けると、『ひやっ』とする感覚が少ないことに気が付かれると思います。これはチタンの熱伝導率が低く熱や電気を通しにくいという性質によるものです。純チタンの熱伝導率は鉄の約1/4、銅の約1/23です。身に着けたときに肌の熱が奪われにくいため時計などは快適な着用が可能で、熱の影響を受けやすいエンジン部品などにも多く使用されているそうです。
ちなみに、表面の硬さを表す“硬度”についてはステンレススチール(316L)が約200HV(ビッカース)であるのに対して、グレード2は約150HV、グレード5で約350HVです。
さて、このような特徴を踏まえ、ジンでは今年の新作Tシリーズにこのチタンを採用いたしました。
さて、このような特徴を踏まえ、ジンでは今年の新作Tシリーズにこのチタンを採用いたしました。ケースベゼル共にチタン製のT50と、ケースはチタン製で回転ベゼルが新素材のゴールドブロンズ125製のT50.GBDRがあります。T50のサンドマット仕上げのチタン製ケースは、ステンレススチールと比べ少し黒みを帯びており、とても精悍な印象です。肌馴染みが良い色味のゴールドブロンズ125製ベゼルを搭載したT50.GBDRとは印象が大きく異なります。Tシリーズは以下のように機能性、耐久性、信頼性が高いダイバーズウォッチです。
機能性
耐久性
信頼性
チタンの利点を存分に活かしたモデルは、どのモデルとも異なるユニークな相棒となるはずです。軽くてほどよいサイズの直径41mmのケースに、ミニマルなダイヤルデザインのTシリーズは、ジンにとっても特別なダイバーズコレクションになること間違いなしです。
T50は今夏、T50.GBDRは5月発売予定です。